シュナイダーエレクトリックは1月15日、工場や店舗などに設置可能なエッジコンピューティング向けITインフラソリューション「EcoStruxure マイクロデータセンター」を24日から日本国内で提供すると発表した。サーバーメーカーなど同社パートナー経由で販売される。
マイクロデータセンター機器を収納する6Uサイズのラック
EcoStruxure マイクロデータセンターは、海外では2019年10月に発表された。6Uサイズのラック内に1Uサーバーを最大4基搭載でき、無停止電源装置(UPS)やセキュリティ監視装置、配電機器を内蔵するほか、ファシリティー管理のクラウドサービス、設計や構築、設置、運用までのサービスなどで構成されている。
同日開催の記者向け説明会では、データセンター関連事業を担当するセキュアパワー事業バイスプレジデントの多田直哉氏が、「IoTでは、工場や店舗、医療といった現場のエッジ環境におけるITシステムが必要とされ、大規模データセンターとも連携する分散処理が行われる。エッジ環境では、設置や長期的な運用、適切な管理などが難しいという課題があり、それらを解決すべく開発した」と説明した。
EcoStruxure マイクロデータセンターで想定されている主な利用シーンは、流通では多店舗における現場のITシステムや無人店舗での販売システム、医療では病院などの医療システム、教育では校舎などが分散する学校、製造では生産設備の管理などがある。海外では2019年11月に提供を開始しており、既に小売企業で導入に向けた準備が進んでいるという。
6Uサイズのラックは、耐荷重が113kgで床や壁面に設置できる。UPSは、寿命10年のリチウムイオンバッテリーモデルあるいは零下10~摂氏55度で動作可能なモデルを選択でき、セキュリティ監視装置「NetBotz」では監視カメラによる映像監視やセンサーによるラックの開閉検知、温度監視による自動での冷却操作などの機能を備えている。運用監視のクラウドサービスは、同社もしくはマネージドサービスプロバイダー(MSP)が提供するもので、2020年上半期にはデータ分析に基づく最適な運用方法をアドバイス機能も予定している。
マイクロデータセンターのシステム構成としては、同社と協業するHewlett Packard Enterprise(HPE)やCisco Systems、NetApp、Dell Technologies、Lenovoなどのパートナーがレファレンスアーキテクチャーを用意。これに基づいてシュナイダーの機器・サービスと各社のサーバーなどを組み合わせて提供される。また、MSPからも独自のサービスメニューなどを追加した形で提供されるという。
エッジコンピューティングは、データの発生源に近い場所で分析処理や制御などを行う概念。現場とクラウドデータセンターによる処理が遅延によって困難なケースや、クラウドデータセンターのような巨大なコンピューティングリソースを必要としないなどの用途に向いているとされる。例えば、現場でデータの機械学習を行いながら機器を制御する人工知能(AI)アルゴリズムを開発したり、補正したりするためのITインフラといった用途がある。
シュナイダーエレクトリック セキュアパワー事業バイスプレジデントの多田直哉氏
多田氏は、「エッジのコンピューティングシステムはありとあらゆる現場に多数設置されていくが、それを管理するためのリソ―スは増えない。クリーンなデータセンターと違って稼働環境が厳しい設置場所もあり、そこで可用性や耐障害性を高めないといけない要件もある。マイクロデータセンターはそれらに対応する」と述べた。