日本ヒューレット・パッカード(HPE)は1月23日、ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)を再定義し、適用領域を拡大する新製品「HPE Nimble Storage dHCI」を発表、同日に提供を開始した。
主要なコンポーネントは、サーバー「HPE ProLiant DL360/DL380 Gen9/Gen10」 、ストレージ「HPE Nimble Storage」、ネットワークスイッチ「FlexFabric/Aruba/Mシリーズ」で構成されるハードウェアに、「VMware vSphere/vCenter」やdHCI専用のNimble Storage向けソフトウェア「Nimble Storage dHCI plug-in for vCenter」「Nibmle Srorage dHCI展開ツール」などのソフトウェアが組み合わされる。最小構成価格は税別1360万円から。
サーバー、ストレージ、ネットワークをそれぞれ個別に構成する“3Tierシステム”から、メーカー側で事前構成済/検証済システムとして提供されるコンバージドインフラストラクチャー(CI)を経て、アプライアンス型ストレージを排除してサーバー内蔵のストレージをSDS(ソフトウェア定義型ストレージ)技術を活用してプール化し、コモディティーサーバーのみでシステムを構成できるようにしたHCIへと発展してきた経緯からすると、HPE Nimble Storage dHCIは、アプライアンス型ストレージが復活していることから、CIに逆戻りしたようにも見える。
ただし、Nimble Storageが仮想化技術を活用していることから、ハードウェア構成はCIのスタイル、ソフトウェア面ではHCI寄り、という構成だ。なお、“dHCI”という名称は「disaggregeted(構成要素に分けられた) HCI」を意味するという。convergedが「収束する」「集中する」といった意味だったことを考えると、分散なのか統合なのか混乱しているように見えないこともない。

日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏
製品コンセプトや投入の背景について説明した日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏は、HCIの課題として、コンピューティング(CPU)とストレージ容量(内蔵ストレージ)をまとめて扱うため、ワークロードの特性によってはリソース追加の無駄が生じる点を指摘し、さらに従来型の3Tierシステムの場合はリソースの最適化が可能な反面、設計や運用管理の負荷が高いことから、両者の課題を解決し、「良いとこ取り」を狙ったシステムとしてNimble Storage dHCIを位置付けた。
技術面から見ると、HCI流の統合された運用管理を実現するのはNimble Storage向けに提供されるdHCI専用ソフトウェアが実現している形なので、「ソフトウェアさえあれば同じことができると言えばできる」(本田氏)ものの、統合環境として間違いなく動作し、パフォーマンスも出ることを事前に検証するなどのCI流の事前構成済システムとしての品質保証が行われている点がポイントだという。また、元々Nimble Storageで開発された人工知能(AI)技術を活用したサポート機能で予測分析などを行う「HPE Infosight」がNimble Storage dHCIの運用支援にも大きな役割を果たしているという。
HPEでは、元々Nimble Storage向けだったInfosightを他のストレージ製品、さらにサーバーやネットワーク製品までカバーするよう段階的に適用範囲を拡大しており、今後もさらに高度なサポートが提供できるようになるものと期待される。
システム構成の自由度やリソースの最適化と運用管理負担の軽減は矛盾する面がある。HCIは主要コンポーネントをコモディティーサーバーに集約することで多少のリソースの無駄を飲み込んだ上で運用管理の負担を大幅に軽減して支持を得たわけだが、今回のHPEの取り組みは、HCIが実現した高度な運用管理機能を維持しつつ、リソース構成の柔軟性を高めることで両者のバランスを新しい次元に引き上げた、と見ることができそうだ。

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