クラウド型コールセンターで応答率向上--履歴可視化も検討するカインズの挑戦 - (page 2)

翁長潤 藤代格 (編集部)

2020-02-14 07:15

待ち呼の状況を可視化、対応を指示

 カインズでは、単にAmazon Connectを導入するだけにとどまらず、さらなる効率化に向けて、同社独自のニーズに合わせた工夫を施している。

 例えば、応答率向上のカギを握る待ち呼への対応だ。同社は、待ち呼を可視化する機能を活用して課題解消に努めている。

 Amazon Connect自体には待ち呼を可視化する機能はないが、リアルタイムモニタリングツール「壁deコンタクト for Amazon Connect」を使うことで、待ち呼の状況を可視化。野原氏は「CTIソフトウェアやクラウドサービスの開発実績があるズィーバーコミュニケーションズ(港区)をAWSから紹介してもらい、Amazon Connectと連携する同ツールの開発を依頼した。当社がファストユーザーとして活用している」と説明する。

 壁deコンタクト for Amazon Connectによって待ち呼をリアルタイムで可視化することで、例えば、スーパーバイザーが画面で待ち呼を検知した際に「この電話に出てください」などのオペレーターへの指示が可能。応答率を高めている。

 また、深層学習技術を使用したテキスト読み上げサービス「Amazon Polly」を顧客対応に活用。受電時に顧客の氏名をAmazon Pollyで読むことで落ち着いてもらったり、対応重要度を事前にオペレーターに伝達することで心理負担を軽減させる効果につなげているという。

 加えて、より自社のニーズに合致したシステムを構築している。例えば、レポーティング機能としてAWSのビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Amazon QuickSight」を活用したり、CRMと連携することで着信時に電話番号から顧客情報を検索したり、その氏名や過去の問い合わせ履歴も即座に参照することも可能だ。

特定担当者への負荷を軽減、業務を平準化

 Amazon Connectの稼働開始から半年以上が経過したが、どのような効果が得られたのだろうか。

カインズ カスタマーサービス部 ボイスオブカスタマー分析・企画グループ グループマネジャー 西村 望氏
カインズ カスタマーサービス部 ボイスオブカスタマー分析・企画グループ グループマネジャー 西村 望氏

 カインズのカスタマーサービス部 ボイスオブカスタマー分析・企画グループ グループマネジャー 西村 望氏は「コンタクトセンター業務が初めてというオペレーターもいて、ITリテラシーが高くない人もいた」と振り返る。

 業務に役立つ便利な機能であると説明し、システム導入トレーニングにも時間をかけるなど、徐々に慣れてもらったという。属人的であった特定のオペレーターへの負荷を軽減、業務が平準化できていると語る。

 また、野原氏は「多くのクラウドCTIサービスが席数や同時接続数での課金体系だが、Amazon Connectは完全従量課金。コストメリットも得ることができた」と説明する。さらに「当社はAmazon Connectのアーリーアダプターであったため、3カ月ほど時間を要したが、現在ならもっと早期に導入できると思う」と続ける。

日本を代表するIT小売業を目指す

 同社では、今後もシステムの機能拡張を視野に入れている。「顧客の了承を得た上で通話内容を録音し、その録音データをテキスト化して応対履歴を可視化する」(野原氏)ことも検討している。さらに感情分析などを取り入れることで、ポジティブ/ネガティブなど反応を分析し、顧客体験の向上にもつなげたいとしている。

 カインズは、2019年3月に中期経営計画を発表。デジタル戦略を掲げ、「日本を代表するIT小売業」になることを目指している。今後は、ベイシアグループの研究部門とも協力するなどでデジタル戦略にも貢献できる、攻めと守りのコールセンターへの挑戦を続けていくという。

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