富士通は2月12日、人工知能(AI)で画像を解析するソリューション「GREENAGES Citywide Surveillance V3」の販売を開始した。街中や施設などに設置されたカメラの映像を「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」のAI技術で解析し、人物や車両のさまざまな特徴を自動で抽出できる。
富士通の有山俊朗氏
都市全体の動きをリアルタイムに把握することで、安心して快適に暮らせる街作りを目指したスマート都市監視ソリューションと打ち出されている。最初のバージョン(V1)は2016年10月にリリースされ、バージョン2(V2)を経て、今回がバージョン3という位置付けになる。V3で新たに加わった機能は「視認測定」と「属性推定」で、街中に設置されたデジタルサイネージなどの効果測定が可能になる。
視認判定では、カメラの画角内に捉えられた“数十人”程度の人物の映像解析によって視線方向を測定でき、「サイネージを見たかどうか」の判定が可能になる。カメラの画角内にサイネージが写っている場合は、そのサイネージに視線を向けたかどうかを特別なチューニングなしに判定できるという。また、フレーム内に同時に数十人が写っているような場合でも個々の視線の向きを把握できる点が競合にはない特徴だという。画角内に複数のサイネージが写っているような場合には「どのサイネージを見たか」の判定も可能で、少なくとも4つくらいのサイネージであれば識別可能だという。
属性判定は、個人を特定することなく、髪型や服装などの全身特徴から群衆の性別/年代を推定できる。視認判定と組み合わせれば、性別/年代ごとにサイネージを見たか見なかったかという「視聴率測定」が街頭のデジタルサイネージで実施でき、広告効果の定量的な把握が実現できる。
なお、GREENAGES Citywide Surveillanceでは、プライバシー侵害の懸念がある顔認証技術を使っていない点が特徴となる。このため、視認判定/属性判定のいずれも、撮影画像内の人物が小さく、顔が正面に向いていない状態であっても判定を行えるという。
販売価格はサイネージ1つ当たり月額4万円から(導入サービスやコンサルティングは別見積もり)で、2020年度末までに1万件のサイネージへの導入を目指す。なお、大まかな目安として、システム導入時の初期費用として数百万円程度、以後運用フェーズでは毎月4万円という規模感になるという。
デジタルソフトウェア&ソリューションビジネスグループ テクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部 本部長代理の有山俊朗氏は、GREENAGES Citywide Surveillanceについて「ソリューションの形でAIを商品化したもの」と説明し、実用指向の取り組みであることを強調した。さらに、V2までの段階では人や車両を識別することで混雑状況を把握することなどが実現していたが、V3になって「人がどこを見ているのか」「何に関心を持っているのか」といった“人へのフォーカス”が実現できたとした。
この結果、前述のようなサイネージの効果測定に加えて、店舗などでの顧客満足度の向上や不審な挙動の人物を発見するようなセキュリティ用途など、さまざまな適用事例が考えられるとした上で、同社の取り組みを「リアルな空間にデジタルをまとわせる」ことで「AIを活用し、安心して快適に暮らせる街作り」を目指していくと語った。