生産性が特に高いプログラマーを雇えば、企業の生産性を大きく向上させることが可能で、そうした人材は企業の命運を左右するという意見がある。しかし最近になって、その見方に異を唱える調査結果が発表された。
飛び抜けて生産性の高いプログラマー(「10xプログラマー」とも呼ばれることもある)が存在するという見方については、昔からさまざまな議論が交わされている。この議論は、最も優れた開発者は最もパフォーマンスが低い開発者よりも生産性が10倍(10x)高いことを明らかにした1968年の調査に端を発している。
カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所の上級技術スタッフであるBill Nichols氏が「IEEE Software」に投稿した「The End to the Myth of Individual Programmer Productivity」(個々のプログラマーの生産性に関する通説の終焉)と題した論文は、この問題に取り組んだ最新の研究成果だ。
Nichols氏がブログで指摘しているように、1968年以降に行われたさまざまな研究で、パフォーマンスが高い開発者は、平均的な開発者に比べ4~28倍生産性が高いという調査結果が出ている。
しかし、Nichols氏の調査では、一部のプログラマーは他のプログラマーよりもはるかにスキルが優れている(あるいは生産性が高い)という考え方とは矛盾する結果が出たという。同氏は、パフォーマンスの差は個人のスキルに起因する部分もあるものの、各人の生産性には、日によっても、タスクによっても、その他の要因によっても差が出てくると述べている。
同氏は、「第1に、差の大半は、非常に高いパフォーマンスに起因するものではなく、少数の非常に低いパフォーマンスに起因するものであることが明らかになった。第2に、極端にパフォーマンスが高い、あるいは低いプログラマーは非常に少ない。第3に、同じプログラマーが最高・最低の成績を記録することは少なかった」と説明している。
Nichols氏は、これらの調査結果を踏まえれば、ソフトウェア開発プロジェクトのマネージャーは採用のアプローチを変えるべきだと主張する。例えば、組織の生産性を向上させるには、最高のプログラマーを獲得することだけに力を入れるのではなく、「有能」なプログラマーを見つけて才能を伸ばすべきだと同氏は言う。