レジリエンスを向上--日常業務にBCPを埋め込むためのリモートワークを考える - (page 2)

尾羽沢功 (シトリックス・システムズ・ジャパン)

2020-03-05 06:45

プラン構築

 明確なBCPを文書化し、それを必要とするすべての人が容易に、また重要な要素としてどこからでもアクセス可能な場所に置くことが不可欠です。オフィスにいない時にはアクセス不可能なデータセンター内のサーバーにプランを置いても意味はありません。

    プランに含めるべき項目
  • 主要な関係者のリスト、BCP発動時の命令系統
  • 従業員、請負業者、経営層、サプライヤーを含め、状況の把握を必要とするすべての人との連絡を維持するための明確なコミュニケーション戦略
  • 主要な業務機能がどのように維持されるかのプロセス(これにはより重要なサービスが最初に利用できるよう、どの機能を復旧するかの優先順位も含める必要があります)
  • 業務がどのように継続されるかを周知するため、BCPに関する従業員とその他関係者への教育プラン

 最後に、BCPの策定は一度行えば良い訓練ではありません。これは新たなシステムやプロセス、あるいは新たなビジネス機能の追加など、ビジネスの変化に合わせて常に進化し続ける“生きた”文書とする必要があります。

BCPとしてのリモートワーク

 これが事業継続性への伝統的なアプローチであり、業務中断が発生した場合の代替的手段をビジネスに提供するものです。しかし、これは通常とは異なる働き方であるため、メンテナンスが必要であり、さらに別の解決策の展開が求められることもあり、かつこのシナリオ下での働き方について従業員へのトレーニングが必要とされます。

 しかし仕事を通常の業務と、このようなBCPに基づく対応に分けることは必要でしょうか? 従業員が職場に辿り着けないような状況に対しては、リモートワークが可能であるかぎり対処することができます。このような機能を日々の業務に組み込むことはできないでしょうか?

 職場で行う業務が自宅や喫茶店、空港、あるいはその他の場所で行う業務と異なっていなければならない理由はありません。GoToMeetingやTeamsのような会議システムを使えばどこからでも他の人とのコラボレーションが可能です。Citrix Workspaceをはじめとするワークスペーステクノロジーを使えば、仕事に必要なすべてのアプリケーションやデータ、ワークフローへのアクセスが可能です。

 リモートワークの人気がますます高まってきています。また企業や組織がこれを行わざるを得ないような状況も存在します。Bloombergは中国の現在の状況を、企業が従業員の自宅での業務を可能とせざるを得なくなっている「在宅勤務における世界最大の実験」と呼んでいます。オーストラリアでも同様な状況が発生しており、最近の火災のため企業の従業員が従来とは異なる場所で働くことを余儀なくされています。

 リモートワークは従業員がどこにおいても業務を行えるという点だけではなく、従業員が仕事と生活とのバランスをより高められるという点でも企業にとって有益です。ワークライフバランスは従業員による前向きなエンゲージメントにとって極めて重要であり、また最終的にはより良いエクスペリエンスを従業員にもたらします。

 リモートでの働き方は、他のどの場所での働き方とも同じでなければなりません。つまるところ仕事とは場所ではなく、私たちが何を行うかだからです。

尾羽沢功(おばざわ・いさお)
シトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長
1982年に高見澤電機製作所(現・富士通コンポーネント)に営業職として入社、富士通による買収後は富士通コンポーネントのドイツ支社長として赴任。日本ルーセントテクノロジー(現・ノキアソリューションズ&ネットワーク)と日本アバイアで取締役 営業本部長職、2005年からSAS Institute Japanで執行役員営業統括本部長、2013年からインフォアジャパン代表取締役社長を歴任。
2019年4月からシトリックス・システムズ・ジャパン代表取締役社長に就任、日本市場での営業やマーケティング、新規事業開発などを統括している

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