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記事まとめ「テレワーク常態化で見えたこと」
アジャイル開発を加速させるローコード技術の衝撃

第6回:ローコード開発、実際どうなの?--導入企業の本音を聞く(3)

贄良則、茎田浩明

2020-03-10 07:00

 第5回ではローコード開発ツール「Web Performer(ウェブパフォーマー)」と「GeneXus(ジェネクサス)」の導入事例を紹介した。今回はローコード開発ツール「Wagby」と、ローコード開発手法「ユニケージ開発手法」を紹介する。

大手樹脂加工メーカー、積水化学工業の場合

 まず紹介するのは、ローコード開発ツール「Wagby (ワグビィ)」で、現場主導の内製化を推進する積水化学工業の事例だ。

 同社は、住宅、高機能プラスチックス、環境・ライフラインを主要事業としており、これらを支えるための国内の基幹システムはERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入せず、会計から販売管理まで全て手作りしてきた。さらに電子メールやグループウェアも自社開発というこだわりの内製文化を育んでいた。そのような背景から、内製開発の高速化、そして情報システム部だけでなく現場自身で開発できるようにしたいという課題の解決として、ローコード開発ツールのWagbyに興味を抱いた。

 Wagbyは、ウェブベースのエンタープライズアプリケーションをノンプログラミングで超高速に開発するローコード開発ツールだ。設計情報から業務ルール、画面、データベーススキーマなど、全てを自動生成することができる。詳細設計から単体テストまでの工数を大幅に削減することに加え、実際に動作するシステムを使ってレビューすることで、要件の修正もすぐに反映できるようになる。

 同社の経営戦略部情報システムグループに所属する堀平良氏は、経理部門の業務改善企画を連携して取り組むことになったとき、これをWagbyでトライアルすることにした。プロジェクト名を「LINKS」と命名し、現場が主体となってWagbyで開発する体制を整えた。

 このシステムは、いわゆる期末決算報告にかかわるものである。経理部門は上期末と下期末というタイミングで決算や税務報告に必要な情報を集めなければならない。そこで社内の各部署に対して帳票形式のExcelシートを渡し、期日までに入力してもらい、さらにそれを集計するという対応を行っていた。しかし、50部署全17種類のフォーマットを整理するのは手間がかかる上に、決算繁忙期に重なるため、現場の負荷は大きいものとなっていた。

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 システム化の着手に当たり、堀氏はExcelでの運用を止めてデータベース化することのメリットを現場に理解してもらうとともに、これは業務要件の再整理も行う機会であると強調した。現場もそれに応え、結果として17種類あった業務を9種類まで削減することに成功した。さらに、設計情報を定義するだけで完結する、いわゆるノーコードで開発できる領域が圧倒的に多いという特徴を持つWagbyを活用することにより、早い段階からプロトタイプ画面を使ってもらうことで、要件の漏れや気づきを吸収できたため、わずか3カ月で開発を完了することができた。開発工数に至っては、わずか3人月であった。これは、同社の経験値をもとにしたスクラッチ開発での工数見積もりの4分の1程度だったという。

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 同社はシステムのカットオーバー後、効果測定のために利用部署にアンケートを取っている。その結果、約7割のユーザーが「改善された」と評価した。当初の目的であった経理部門の集計作業は、驚くことに9割の削減という効果を得ることができた。

 しかし、このような事例であれば別の解決策もあり得たであろう。具体的にはRPA(ロボテックプロセスオートメーション)、つまりロボットによる操作の自動化である。システム化せずともRPAで現場の省力化につなげるというアプローチを採らなかったのはなぜか。これについて堀氏は次のような考え方を披露した。

 「ロボットの採用を前提としたとき、17種類あったファイルをそのまま自動化するという発想で現場はプロジェクトを進めたはず。しかし、Wagbyの採用によって、まずデータモデリングありきで現場と話をすることができた。最初は驚いたかもしれないが、モデリングという考え方があって初めて、9種類までの削減につながった。さらに、モデリングの結果がすぐにシステムに反映される高速開発を目の当たりにしたことで、現場も積極的にかかわるようになった。ロボットの採用は、自分の業務を(ロボットに)丸投げすることにつながるが、Wagbyを活用することで、自分の業務を見直すことになる。さらに、データの流れを理解することで、個人ではなく組織全体が楽になるにはどうすればいいかということに意識を向けることができたと感じている。開発工数の削減だけを捉えればどちらも似たような効果だったかもしれないが、これからの応用性を考えると、モデリングありきのWagbyは期待できる」

 現場でまだまだ、改善したいテーマが山積している。いくらWagbyを使うといっても、これら全てを本社の情報システムグループが対応することは現実的ではない。現場自身で開発から運用まで完結できる環境が必要だ。同社は、今後もロボットありきではなく、現場による内製、モデリングにこだわっていきたいという。ノンプログラミングで実現できる機能が豊富なWagbyは、強力な武器になりそうだ。

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