攻めのDXを成功させるためには、会社全体のビジネスと組織、そしてICTを再設計し「アーキテクチャ化」しなければなりません(アーキテクチャ化の詳細は今後の連載で詳説します)。DXの最初のステップは、「会社のアーキテクチャを変えること」です。
多くの日本企業は、下の図のとおり組織ごとにサイロ化されています。特に大規模企業になればなるほど、他事業部が何をやっているか知りません。情報共有のスピードが遅いというだけでなく、事業部間の縄張り意識が強く、組織横断的にプロジェクトを実施することが苦手なのです。
DXは、既存の組織体制やビジネスの枠組みを維持したまま取り組んでも成功できません。すべての事業部を横断し、それぞれのプロジェクトで柔軟に組織を組み替えられる体制を、会社全体で再構成する必要があります。つまり、DXの本質は「経営改革」なのです。
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経営改革のPDCAとは
では、会社全体をアーキテクチャ化するためには、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか。
下の図を見てください。これは、経営改革のPDCAを表したものです。
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「行動規範を明確にする」とは、経営方針のミッションやビジョンを明確にすることです。
「仕事の役割を明確にする」とは、組織の中の「役職」ではなく「ロール」という「仕事の役割」を明確にすることです。外資系企業では「○○社に就職する」ではなく、「○○社の××というポジションに就く」という言い方をしますよね。これは、ロールの役割が明確になっているからです。
「コミュニケーションを最適化する」とは、コミュニケーションの種類ごとに、どのようなツールを使うかを定義し、コミュニケーションの内容を可視化することです。会話(やチャット)をほどよく可視化することが、組織力の強化につながります。
「人事制度を実力主義にする」とは、ロールと給与をマッチさせ、社員が自分らしい仕事のやりかたを実現する仕組みを構築することです。
「ROB(Rhythm of Business)を明確にする」とは、各ロールの状況を可視化し、意思決定の基準を明確にして改革を根付かせる仕組みです。
DXを成功させるためには会社組織全体で行動規範と仕事の役割を明確にし、目標を設定したうえで、各部署が協力する必要があるのです。これが徹底されなければ、DXは「コストばかりかかったやっかいなプロジェクト」で終わってしまいます。しかし、経営改革に必要なそれぞれのアクションを着実に実行し、スピード感を持ってPDCAを回せば、DXは実現できるのです。
では、どのようなステップで実行すればよいのでしょうか。次回からはそのハウツーを紹介していきましょう。
(第2回は5月中旬にて掲載予定)
- 各務 茂雄(かがみ しげお)
- KADOKAWA Connected 代表取締役社長
- 情報経営イノベーション専門職大学 准教授
- EMC CorporationやVMware、マイクロソフトなどでエンジニアやプロダクトマネージャー、クラウド技術部部長などを歴任。楽天ではプロダクトマネージャーとして楽天優勝セールを支えるインフラの構築、アマゾン ウェブ サービス ジャパンではコンサルティングチームの責任者として顧客企業のクラウド導入・移行支援を統括した。ドワンゴではICTサービス本部長として、同社のインフラ改革を1年で実現した実績を持つ。