2.高品質データの重要性、顧客のデータを利用
深層学習を改善するには、高品質なデータが必要になる。高品質なデータが多いほど、システムのパフォーマンスは向上し、より多くのデータを入力すれば、より良いパフォーマンスが見込める。これを実現する方法は、学習データを実際の使用状況とできるだけ類似したものにすることだ。
データを取得する最良の方法は、製品をユーザーの手に渡して、彼らの同意の上で日常生活で使用してもらい、そこからデータを収集すること。つまり、ユーザーが製品を使用している正確な環境で学習データを取得する。
例えば、米国のTeslaには素晴らしい事例がある。電気自動車を使用した大規模なユーザーベースを持っているため、大量のデータを収集し、深層学習を使用してAIモデルを再トレーニングしている。
次に、この情報を使用して、車内のソフトウェアにOTA(Over the Air=無線経由のソフトウェアアップデート)アップデートを継続的に送信することでその方向にさらに進めるポジティブフィードバックループを構築している。収集するデータが多いほど、そのモデルの精度が上がり、ユーザーにより良いサービスを提供できるようになる。深層学習を使用することで、運転の安全性を継続的に向上させ、サービスを改善し、その過程でユーザーベースを拡大し続けることができる。
もちろん、成功とは言えない事例もある。販売する商品が少なければ収集するデータが限定的となり、深層学習の精度は低下する。この場合のデータは、実際の使用状況に基づくものではなく、想像上の使用例から収集したデータを使うこともある。ユーザーベースがない場合、現実的なデータを大量に取得することはできないため、深層学習は製品またはサービスの改善に役立たない可能性がある。消費者向けロボット製品は、電気自動車ほど速く精度の前進は見込めないのはこうした理由からだ。
過去5年間で、さまざまな技術分野で深層学習の利用を試みたが、多くの場合、この鶏が先か卵が先かの問題を解決できず失敗した。魅力的な製品を作り提供するにはAIだけでは十分ではなく、AIと他の要素を組み合わせて提供する必要がある。長期的なメリットをもたらすのはAIであることは間違いない。いったんこの壁を突破すれば、商品の品質が向上し、それが顧客基盤をさらに成長させ、市場を拡大することができる。