アイ・ティ・アール(ITR)は6月9日、国内の“従業員エンゲージメント”市場の規模と予測を発表した。2018年度の売上金額は前年度の3倍である24億円と急激に拡大。2019年度も66.7%増を見込んでいる。
今後もさらに導入ニーズが高まるとみており、2018~2023年度の年平均成長率は37.5%、2023年度には120億円に迫ると予想している。
2017~2023年度の従業員エンゲージメント市場規模推移と予測(出典:ITR)
従業員エンゲージメント市場は、従業員が組織の目標や戦略を理解して、自発的な貢献意欲を持つことを意味する「エンゲージメント」の度合いを測定したり、その向上を支援したりするための製品やサービスで構成。調査では、短期的なサイクルで調査を実施する「パルスサーベイ」、従業員同士で感謝の気持ちやボーナスを送り合う「ピアボーナス」などの機能を有する者も対象としている。
2017年度から市場を形成した従業員エンゲージメントは注目を集めており、参入ベンダーも増加傾向と説明。従来の終身雇用の維持が難しくなっていることに加え、キャリア志向の高まりによる離職率の向上、労働人口の減少による採用環境の悪化などが背景にあると指摘する。
企業では、従業員のモチベーションの向上、離職率の低減が喫緊の課題と分析。これらの課題への対応として、従業員エンゲージメントの重要性が高まりつつあると指摘している。
シニア・アナリストの舘野真人氏は以下のようにコメントしている。
「従業員の働き方の多様化や流動化の促進などにより、組織が掲げる目標や価値観に対する理解や共感、自発的な貢献意欲の度合いは、人材の獲得や維持に関わる重要な要素と認識されるようになった。また、今般のコロナ禍を受けて、組織強化に乗り出す動きも活発化している。職場環境における従業員体験を定点観測することで課題を見出したり、従業員同士の関係性を強化したりすることを目指す従業員エンゲージメントツールは、組織の健康状態を可視化するための診断ツールとして、企業の規模や業態を問わず導入が活発化することが見込まれる」