レースも工場も閉鎖、F1のMercedesが呼吸装置を開発できた理由
この他に、2019年のイベントでAmazon Web Services(AWS)向けが一般提供となったクラウドストレージ「Cloud Block Store(CBS)」で、Microsoft Azure向けがベータ版になったことも発表した。
Cloud Block Storageはハイブリッドクラウドを前提とした設計を特徴とするが、「アプリケーションのマイグレーション、ディザスタリカバリ、バックアップなど様々なハイブリッドやマルチクラウド環境のデータフローに使っている」とGiancarlo氏は述べた。
Giancarlo氏は、新型コロナウイルス感染症をはじめとした不確実な時代のITシステムでは、(1)土台の安全性と柔軟性、(2)効率性が重要だとする。
特に効率性については、データストレージの効率性は「テラバイト(TB)当たりのコストを中心に、管理コスト、電力・面積・冷却などのコストを合計したもの」が一般的だが、これからは「人間の効率性が中心となり、TB当たりのコストと柔軟性が加わる」と説明する。人間の効率性のためには、簡素で高信頼性が重要とし、中断のないアップグレードや99.99999%の可用性といったPureの機能、従量課金サービス「Pure as a Service」などが支援できるとした。
コロナ禍にあって柔軟な発想で乗り切っているのが、自動車レースのF1に参戦しているMercedes-AMG Petronas F1 Teamだ。Giancarlo氏と対談したチームプリンシパル兼CEOのToto Wolff氏は、英国のヘルスケア業界向けに英政府などと協業して新しい持続気道陽圧(CPAP)装置の設計と開発を行った「Project Pitlane」を紹介した。英国に拠点を置く複数のF1チームは、レースカーの製造設備を活用してコロナ禍で不足した医療機器を製造する取り組みをしている。
Wolff氏によると、Project Pitlaneはあるエンジニアのアイディアから始まったという。「チーム内にある集合知を活用して、F1のデザインで利用するシステムを使ってCPAP装置を開発した」とWolff氏。
初回のテストでチューブが正常に機能していないことが分かり、72時間で修正して新しい装置を用意したという。「F1で習得したスピードと学びは本物で、いつでも実際の生活で実装できることが分かった」(Wolff氏)
Project Pitlaneの下で開発したCPAP装置は、英国の規制当局の推奨装置となっている。

Mercedes-AMG PetronasはF1レースカーの経験を活かして迅速に呼吸を支援するCPAP装置を設計した
なおWolfe氏は今後の展望について、「2020年の(レース開催)カレンダーが発表されたばかり」「観客やメディアがいない(無観客)のでレースそのものに集中できる」としながらも、「10年ぐらいすれば、人々がやりとりし、一緒にレストランに行き、マスクをせずにレースを楽しむのではないか。(新型コロナウイルスは)難しかったが多くを学んだと言えるようにしたい」と述べた。