NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、学校教育での仮想現実(VR)学習の有効性に関して実証実験を行い、確認したを発表した。
実証実験は、2月に京都市の同志社中学校で行い、専門家の知見を得ながらその結果を分析したところ、VR学習は従来の学習に比べ、生徒の習熟度が高くなることが確認された。生徒を12人ずつの2つのグループに分け、入国審査やレストランでの注文など、留学や海外旅行で必要となる英会話を学習する設定で実験している。
実験のイメージ
一方のグループは、スクリプトと音声教材による従来の方法で学習し、もう一方のグループはVRを活用して現実さながらのコミュニケーションを体験した。その後、それぞれのグループの生徒に対し理解度テストを行い、ネイティブスピーカーと英語教諭が、習熟度を5項目で評価することで、グループ間の習熟状況の差異を比較した。
採点項目
VR学習を行ったグループは、従来方法で学習したグループに比べ、「レスポンス」「発音」「正確性」「理解力」の4項目でスコアを上回っていることが確認された。特に「正確性」では約10%向上していた。
また、VR学習を体験した生徒を対象にアンケート調査を行ったところ、約74%が「VRによる学習方法は効果がある」と回答した。その理由には「本当にそこに外国の方がいるようで、理解度テストではあまり緊張しなかった」などの声が挙げられ、VRで疑似体験をすることで、テストでも落ち着いて対応できることが効果として挙げられる。
教諭や教育分野の認知科学を研究している専門家は、今回の結果に対して「VRを活用することで実体験と同等の経験をすることができ、学習内容の定着の度合いが高い傾向がみられた」「従来の日本の英語教育は文法や単語を覚えることが中心で、英語を使う機会がないことが課題となっていたが、英語を使う経験を繰り返しできるVR学習は、新たな学習手段として期待できる」としている。
NTT Comでは今後、学校教育にとどまらず、医療や観光業など、さまざまな産業分野の教育・研修活動におけるVRの活用を積極的に進めていく。また新型コロナウイルスの予防対策として集合や移動が制約される中、非対面でリアリティのある体験を行うことの重要性が高まっていることから、VRなどを活用してあらゆる事業活動の仮想化を実現していく。