ネットワークが追い付かず--ストレージ費用などでパブリッククラウドから回帰

阿久津良和

2020-06-24 07:00

 クラウディアンは6月23日、「日米オブジェクトストレージ事情」と題したプレスラウンドテーブルを開催。同社の説明によれば、企業が生成するデータ量の増加に伴い、パブリッククラウドからオンプレミスやプライベートクラウドに回帰しているという。

 同社代表取締役 Brian Burns氏は、海外に投資していた資金を本国に引き揚げるなどの経済用語である「Repatriation」に倣って“データリパトリエーション”が起きていると説明。「3~4割の日本企業がパブリックサービスからプライベートクラウドに移行した」(Burns氏)

クラウディアン 代表取締役 Brian Burns氏
クラウディアン 代表取締役 Brian Burns氏

 クラウディアンが提示したデータによれば、10年前となる2010年の企業が生成するデータ量は2ZBだが、2025年までに175ZBまで拡大するという。だが、対応するネットワークインフラストラクチャーは増加するデータ量に追従できず、パブリッククラウドからオンプレに戻る傾向が世界中で発生していると説明する。

 富士通グローバルが700社を対象にして5年先のITインフラ導入形態を調査したところ、36.71%が自社のオンプレ環境、35.33%がマネージドサービスプロバイダー、27.95%がパブリッククラウドにデータを格納すると回答した。Burns氏は「(データ生成量と)ネットワークインフラにギャップがあり、(その差が)広まっていくのが市場課題。プライベートクラウドへの回帰につながる」と分析する。

 IDCが2019年6月に実施したデータリパトリエーションレポート(n=2211)によれば、85%の企業がパブリッククラウドからの回帰先としてオンプレやプライベートクラウドの検討もしくは導入に着手している。そのうち50%はオンプレミス型のプライベートクラウド、49%ホスト型プライベートクラウド、10%がオンプレミスを選択した。

 その理由としてBurns氏は「パブリッククラウドの採用理由として44%がテストや開発といった短期用途。本番環境においては中長期運用を踏まえてオンプレに実装するケースは日本の企業も同様だ」と語る。

 ストレージスペースとしてパブリッククラウドからオンプレやプライベートクラウドを選択する企業は「格納データの読み出しなどに伴い、費用が変動する『コスト』、パブリッククラウドの宿命ともいえるが、“昨日は速いが今日は遅い”といった『パフォーマンス』、グローバルの共通課題である『セキュリティ』」(Burns氏)という観点から回帰を選択しているのだろう。

クラウディアン 営業ディレクター 石田徹氏
クラウディアン 営業ディレクター 石田徹氏

 ただし、ハードウェアの調達にリースを利用する場合、コストメリットが発生するのか疑問が生じるものの、クラウディアン 営業ディレクター 石田徹氏は「3大パブリッククラウドのストレージサービスは1カ月あたりのビット単価は2~3円、加えて、読み出すコストが発生して合計するとビット単価が上昇する。弊社のストレージアプライアンスでオンプレ環境を構築した場合、1カ月あたり0.5円程度で使用可能」と説明した。

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