パナソニック コネクティッドソリューションズ社(パナソニックCNS)は6月24日、サプライチェーンマネジメント(SCM)への取り組みについてオンライン説明会を開き、Blue Yonderとの協業を軸に、この分野における事業を加速する考えを示した。
パナソニック コネクティッドソリューションズ社 上席副社長の原田秀昭氏
パナソニックCNS 上席副社長の原田秀昭氏は、「サプライチェーンの変革が求められ、製造業では毎日決まった量を生産するといったことではなく、市場のデマンドや部材の調達量といったサプライチェーンの変化に伴って柔軟に生産量を変えていく必要がある」と語った。そのためには、Blue Yonderが持つ人工知能(AI)や機械学習を活用したサプライチェーンプラットフォームと、パナソニックが持つ現場のIoTやセンシング、画像認識、ロボットを組み合わせる必要があるとの考えを示し、「これと同様のことが製造業だけでなく物流や小売で求められている。協業による事業規模は検討中だが、Blue Yonderの売上高の6割を占めるリカーリング型ビジネスを学び、パナソニックのビジネスをリカーリング型にシフトさせていきたい」などと述べた。
パナソニックは、2019年4月にBlue Yonderと日本市場における協業で合意した。2019年11月29日には、Blue Yonderジャパン(旧JDAソフトウェア・ジャパン)が51%、パナソニックが49%をそれぞれ出資し、「Blue Yonder パナソニックビジネスソリューションズ」を設立。2020年5月には、Blue Yonderに20%を出資することを発表するなど協業関係を強化している。
Blue Yonderは、世界最大のサプライチェーンソフトウェア専門企業で、2020年2月にJDA Softwareから社名を変更した。旧JDA Softwareは、1985年の設立以来、35年間にわたってサプライチェーンに特化したビジネスを推進し、2018年にドイツのBlue Yonderを買収、現在はAIおよび機械学習を組み合わせたエンドツーエンドのサプライチェーンソリューションを提供する。
同社の主力製品となる「Luminate」ソリューションは、AIおよび機械学習を使った全体最適化プラットフォームとして展開しており、76カ国・3300社への導入実績を持つ。製造業ではトップ100社のうち70社、流通業ではトップ100社のうち73社、物流業ではトップ10社のうち8社が導入している。
物流向けソリューションの「Luminate Logistics」、流通向けソリューション「Luminate Retail」、計画系ソリューション「Luminate Planning」などを製品化している。AIおよび機械学習を活用しながら、サプライチェーン全体を可視化するSCMソフトウェアプラットフォーム「Luminate Control Tower」により、サプライチェーン全体をリアルタイムに可視化するとともに、高度分析を活用した対応策を提示するなど自律化を推進。自己学習型サプライチェーン構築の基盤を構築できる。これにより、サプライチェーンで発生し得る障害を事前に検知して、障害発生を予防したり、収益性を考慮した対応策を実施することで収益を確保できたりするほか、サービスレベルの向上やコスト削減につなげられる。
グローバル標準のサプライチェーンマネジメント(出典:パナソニック)
パナソニックCNS カンパニー戦略企画室長の竹内俊一氏は、「日本でのサプライチェーン構築は、エンドツーエンドでの最適化やデジタル化で海外に比べ遅れている。海外でサプライチェーンの全体最適化や経営効率化が一歩進んでいるのは、Blue Yonderの貢献が大きい。だが、理想的な状況ではないことも確か」と話す。
Blue Yonderと英ワーウィック大学の調査では、小売業におけるサプライチェーンの成熟度レベルが「自律化(オートノマス)」を最高とした4段階評価で平均2.1となっており、倉庫の完全自動化を実現している企業は10%にとどまる。「Blue Yonderとパナソニックの協業により貢献できる機会が多い」(竹内氏)とした。