Googleは、オープンソースプロジェクトの商標管理団体Open Usage Commons(OUC)を設立し、同社が主導する3つの重要なオープンソースプロジェクトの商標をOUCに移管すると発表した。商標の管理が移管されたのは、モバイル向けとデスクトップ向けの共通ウェブアプリケーションフレームワーク「Angular」、ウェブベースのコーディングコラボレーションツール「Gerrit」、最近特に注目を集めている、マイクロサービスを接続、管理、保護するオープンメッシュプラットフォーム「Istio」だ。
OUCが引き受けているのは、今のところGoogleの3つのプロジェクトだけだ。しかしOUCは、あらゆるオープンソースプロジェクトに、中立的でほかの組織から独立した商標を預けられる場所を提供するとしている。OUCはまた、適合性試験の実施や、商標の利用ガイドラインの確立、商標利用に関する問題の処理についての支援を行う。一方で、技術指導やコミュニティ運営、プロジェクトのイベント運営、プロジェクトのマーケティングなどの商標利用以外に関するサービスは扱わない。
Googleのオープンソース担当ディレクターであり、OUCのチェアを務めるChris DiBona氏は、Protocolの取材に対して、「私たちが掲げているのは、私たちは商標の司書だということだ」と述べている。DiBona氏はまた、「私たちは『オープンソースの定義』に商標を持ち込もうとしている」とも付け加えている。
ただし、オープンソースの定義を管理しているOpen Source Initiative(OSI)は、この話を事前に聞いていなかったという。OSIのプレジデントであるJosh Simmons氏は、「もちろん、オープンソースの定義との整合性を確保すると明言して活動してくれるのは歓迎すべきことだ。しかし私たちは、まだこれが何を意味するのかを把握しようとしている段階であり、今は様子を見ている」と述べている。
Googleの新しいアプローチに戸惑いを見せる人は多い。以前から、商標はオープンソース関連の企業や団体にとって重要な問題だった。例えばRed Hatは、2004年に、Red Hatのソースコードは誰が使っても問題はないが、第三者が同社の商標である「Red Hat」の名前を製品に使えば問題になると明確に述べている。当時、Red Hatの次席法務顧問兼秘書役を務めていたMark Webbink氏は、「オープンソースエコノミーの中では、価値を生むのはRed Hatのブランドとサービスだ」と発言していた。
オープンソースの商標に関する有名な事例をもう1つ挙げるとすれば、Mozillaが2000年代半ばに「Firefox」を商標登録した件だろう。これは、多くのサイバー犯罪者が、マルウェアが組み込まれた「Firefox」のCD-ROMを、Firefoxの名前で再販していた問題に対処するためだった。この商標登録はほかのオープンソース団体(特にDebian)から批判されたが、その目的には適った。登録によって、「Firefox」という名前や商標登録されたロゴがあれば、それがMozillaのFirefoxであることが分かるようになったためだ。
今では、多くのオープンソースプロジェクトが名前やロゴの商標登録を行っている。それらのブランディングに関する要素は、MozillaやRed Hatの例に倣って、プログラムのソースコードには含まれていない場合が多い。一般的には、これらの要素はバイナリファイルだけに組み込まれている。