プロアクティブが重要--顧客満足度向上を狙う「Circlace」のユニークさ

阿久津良和

2020-08-21 06:45

 既存顧客との関係性構築を1つのプラットフォームに統合するPaaSである「Circlace(サークレイス)」を提供するサークレイスは7月1日に旧社名のパソナテキーラの現社名に変更した。8月20日に開いた記者会見で代表取締役社長 佐藤潤氏は「マザーズ上場を準備している。ソリューションとともにブランド構築を実現するため」と理由を説明した。

 サークレイスが8月7日から2日間実施した調査結果によれば、73.9%の顧客が「サービスに対する不満が原因で解約」し、82%の顧客が「プロアクティブ(積極的)な行動が足りない」と感じているという。

 一方で、サービスを提供する企業側は、自社サービスが顧客満足の向上について十分な対策ができているか、との問いに62.9%が「ユーザーを満足させられていない」と回答。また、顧客の意見や要望が自社サービスに反映できているか、との問いには89%が「要望に応えられていない」と回答した。業務内容に対しては89%が「時間が足りない」、71.9%が「コロナ禍以前と比べて、新規獲得が難しくなった」、70%が「新規よりも既存顧客のフォローに注力すべき」と回答している。

 同社が引用したMarkets and Markets Analysisの調査によれば、2019年時点のカスタマーサクセスプラットフォーム市場規模は854億円。年成長率は25.5%で上昇し、2024年段階では2664億円規模まで拡大するという。

 各種課題の解決策として、マーケティング部 杉山弘治氏は「顧客が『何を求めているか』を把握し、プロアクティブなサービスの提供を実現するプラットフォーム」として、Circlaceの存在を強調した。

Circlaceの概要(出典:サークレイス) Circlaceの概要(出典:サークレイス)
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 Circlaceは社内のプロジェクト管理や顧客とのコミュニケーション、ナレッジ管理を1つのプラットフォームにまとめ上げたPaaS。カスタマーサクセスに必要な機能を集約し、現場の工数削減や余剰した工数で品質の向上を目指す。また、一連のデータを1カ所に集約することで、ビジネス判断や人工知能(AI)活用を実現するという。

 実際にサークレイスでは、顧客からの問い合わせから提出するレポート作成に多くのツールを併用していたが、データが散在するために工数負荷が高かったという。

 Circlace導入後は業務プロセスが一気通貫となり、それまでのコストは月間で4万1650円から1万円に、所要時間も月間で150時間から60時間へ、稼働数も2.5人月から1人月に削減できたと説明。当該サービスの売り上げも1.56倍に向上したと説明。杉山氏は一連の利点に加えて、「データ活用の可能性は無限大」とアピールする。

 Circlaceは、Dockerのオーケストレーションツールである「Kubernetes」のマネージドサービスである「Amazon Elastic Kubernetes Service(EKS)」で構築したマイクロサービスで各機能を実現しており、データ蓄積先として台帳型データベース「AWS Quantum Ledger Database(QLDB)やオブジェクトストレージ「AWS Simple Storage Service(S3)」などを利用している。

 最高デジタル責任者(CDO)の井上賢氏によると「ユーザーの行動情報をブロックチェーンに書き出すことで改竄を防ぐ」機能も備えており、独自のIDやパスワード以外にも、SalesforceとGoogleによるシングルサインオンにも対応。Circlaceに蓄積したデータは「Microsoft Power BI」など各種ビジネスインテリジェンス(BI)ツールで可視化し、業務の意思決定に利用できるとしている。

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