製造装置や生産自動機などに利用する精密機械やFA事業プレス部品、金型に組み込む精密部品を取り扱う金型部品を製造するミスミグループ本社(文京区、連結従業員数1万2138人)は機械加工部品調達オンデマンドサービス「meviy(メヴィー)」を7月中旬から全面刷新。8月25日に記者会見を開催した。
同社は資本金3億円以下の法人または常時使用する従業員の数が300人以下の製造系法人に対して、meviyラピッドプロトタイピングやFAメカニカル部品、金型部品を最大10万円まで無償提供する「meviyものづくり中小企業支援」を同日から開始。12月末まで提供する(支援を決定した法人数が100に達した時点で終了)。

ミスミグループ本社 常務執行役員 兼 3D2M企業体社長 吉田光伸氏
常務執行役員で3D2M企業体社長 吉田光伸氏は「日本製造業の競争力強化、コロナ禍から復興するきっかけにつなげてほしい」と説明する。
日本生産性本部の調査によれば、日本の製造業における労働生産性は2000年まで経済協力開発機構(OECD)加盟国中1位を保持してきたが、2005年には8位、2010年には11位、2017年には21位と下落の一途をたどる。
ミスミグループ本社が従業員300人以下、資本金3億円以下の製造系中堅中小企業を対象に8月に調べた実態調査(n=1030)によれば、業務従事時の時間不足を感じる割合は成長企業が24%、非成長企業は54%。
成長のために取り組んでいるツールを複数回答で尋ねると、成長企業と非成長企業がともにデジタルツールを活用。内訳を見るとテキストチャットやオンライン会議、データ管理といったものが並ぶ。さらに成長企業ほど既存の製品やサービスの高付加価値化、新製品や新サービスの開発、新分野へ進出する割合が高い。
この結果に対して吉田氏は「成長企業はデジタルツールを使いこなして、労働生産性向上から時間創出につなげていた。付加価値向上のために注力し、好業績を実現している」と分析する。
他方で製造業が抱える根本的な課題があると同社は指摘した。「生産年齢人口=労働力が減少し、人手不足という課題に直面している。また、働き方改革関連法案による影響も少なくない。これまで残業でこなしていた業務量についていけない企業の経営悪化が散見され、廃業の加速につながっている」(吉田氏)
背景にあるのは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」で定めた月45時間(年間360時間)の残業時間制限であり、時間不足という課題を生み出しているという。こうした課題から前述した支援策の実施に至った。

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2016年6月から提供しているmeviyは3D CADデータのみで精密機械部品の発注が可能という。当初は数百点の金型部品の見積もりを一括で行い、ミクロン単位の公差を自動設定する機能からスタートし、2017年には米Protolabsと提携して、30種以上の材料に対応しながら試作品を最短1日で出荷するラピッドプロトタイピングを実装した。
2018年には板金部品や切削プレートに代表されるFAメカニカル部品をミクロン単位で製造する機能を搭載。2019年から現在にかけても、対応する商品の拡大や納期短縮に努めつつ、2020年7月中旬には、冗長なコード整理やマイクロサービス化など、アーキテクチャーを全面刷新することでサイトの応答性を15倍、アプリケーション開発や保守効率を4倍に高めたと説明する。