「Windows 95」は“史上最も重要なOS”--MSの元ベテランエンジニアが振り返る

Liam Tung (ZDNET.com) 翻訳校正: 矢倉美登里 吉武稔夫 (ガリレオ) 編集部

2020-08-27 13:51

 「Windows 95」は25年前の米国時間8月25日に正式リリースされた。それを記念して、Microsoftの元エンジニアであるRico Mariani氏が、歴史的背景を踏まえて同OSについて詳しく語り、Windows 95はMicrosoftがその当時提供できた最高のOSではなかったとしても、歴史の中で最も重要なOSだった理由を説明した。

 Mariani氏は、「Windows 10」に搭載された「Microsoft Edge」、その前は「Internet Explorer」やMicrosoftが1990年代に手がけていた都市情報ガイド「Sidewalk」に関わってきた。30年近く務めた同社を2017年に去り、現在はFacebookでソフトウェアエンジニアとして働いている。

 Mariani氏は、Mediumに投稿した懐かしさ溢れる記事の中で、Windows 95は当時とても優れたOSだったと述べ、「歴史の中で最も重要なOS」と評した。「UNIX」の登場から20年以上が経ち、UNIXをベースとしたAppleの「Mac OS」の登場からも10年が経っていたことを考えると、もっともな主張だ。

 Mariani氏によると、Windows 95は当時のハードウェアとソフトウェアの制約を考えると、コンピューター業界がまさに必要としていたものをもたらすダイヤモンドの原石だったという。

 同OSが「数年間は利用でき、業界を新たな世界へと安全に運んでいけるだけの能力を有した救命ボート」の役割を果たしたと述べるMariani氏は、1970年代のIntelのマイクロプロセッサーに言及し、新たな世界とは「8086によって押しつけられた16ビットセグメントという融通の利かないアーキテクチャー」に基づく「Windows 3.1」という世界を脱却した、妥当なハードウェア/ソフトウェアアーキテクチャーが存在する場所のことだと説明した。

 同氏によると、Windows 3.1では「最も重要なソフトウェアの大半が共有アドレス空間内でメモリー保護なしに稼働していた。必要不可欠と言えるプリンタードライバーやディスクドライバーといった重要なソフトウェアでさえも、そうしたモード、すなわち8086の『リアルモード』で稼働していた」という。

 「最も重要なGUIアプリケーションも同じ16ビットモードの共有メモリー空間内で、協調型マルチタスクと呼ばれるスケジューリング手法によって動作していた。このため、あらゆるアプリケーションによって容易にシステム全体がダウンする可能性もあり、実際にダウンすることもしばしばあった。こうした世界でのデバッグは、奇跡を必要とするほど難しい作業だった」(Mariani氏)

 当時のPC業界は、MicrosoftがAppleの「Mac」製品を何千万台も上回る販売数を1995年に記録していたにもかかわらず、「無茶苦茶な状況」だったという。

 興味深いことにMariani氏によると、Windows 95はMicrosoftが当時リリースし得た最高のOSというわけではないという。しかしその理由は、同社のエンジニアたちが質の低い製品を市場に投入したかったためでは当然ない。

 同氏は「これ(Windows 95)は当時のMicrosoftが構築方法を知っていた、あるいは当時の同社が有していた構築能力に見合った最高のOSとは言えない」と説明した。

 「実際に証拠がある。例えば『Windows NT』や、同時期の他のOSを見て考えてみてほしい。“Microsoftは(Windows 95を)開発する取り組みで全力を尽くせていただろうか”。私は、Windows 95よりもクリーンなソリューションを見出すのは簡単だったと考えている。しかし、そういったソリューションは日の目を見なかった」(Mariani氏)

 Windows 95に課された制約はむしろ、既存のWindows 3.1アプリケーションをサポートしつつ、レガシーなドライバーや「DOS」アプリケーションとの互換性を維持しなければならないというものだった。

 Microsoftは、Windows NTとの互換性を有したWin32アプリケーションを実行できるプラットフォームを作り出す必要があった。Mariani氏によると、Windows 95はこれら世界を結ぶテクノロジーの救命ボートだったという。

 Mariani氏は、「Windows 95はこの目的において大成功を収めた。妥協や特例、応急措置の数はとても多かったが、それでも所定の目的を果たした。初日に100万本以上が、そして最初の1年でおよそ4000万本が売れたのだ」と述べた。

提供:Microsoft
提供:Microsoft

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  4. クラウドコンピューティング

    Snowflakeを例に徹底解説!迅速&柔軟な企業経営に欠かせない、データ統合基盤活用のポイント

  5. ビジネスアプリケーション

    AI活用の上手い下手がビジネスを左右する!データ&AIが生み出す新しい顧客体験へ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]