前回は、データマネジメントの必要性とそのアプローチについて述べた。今回は、企業が取り組むべき“データガバナンス”について解説する。
今の時代に避けて通れないデータガバナンス
2010年以降、世界は変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の4つの頭文字をつなぎ合わせた“VUCA(ブーカ)”時代に突入したといわれるようになった。さまざまな予測が困難になりつつあるなかで、組織の理想的な姿として“すべてのユーザーが、正確なデータに適切なタイミングでアクセスし、事実に基づいた迅速な意思決定できる”という概念「データの民主化」で実現するデータドリブンな組織が求められている。そのためには信頼性と安心感を持ってデータを利活用できる環境が前提となり、組織としてデータを統制する“データガバナンス”が必要となる。
データガバナンスの位置付け
データをGovernance(統治、統制)するデータガバナンスでは、データの所在や利用に関する責任、ルール(ポリシー、基準)、運営体制、役割、プロセスなどの整備が求められる。また、データを資産としてマネジメントするための監督という役割もある(図1)。これらの活動が、「データの信頼性」を生み「データ活用を促進させる」ことで、データドリブンが実現していく。
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データガバナンスがないとどうなるか
データガバナンスでは、組織として起こり得るデータに関わるさまざまなリスクを防ぐ必要がある。管理されるデータ、利用条件などで違いはあるが、リスクの一例としては以下のようなものがある。
- データオーナーへデータ入手、利用確認をしていない
- データの取り扱いに関する規約を結んでいない、規約を守っていない
- 個人情報や機密情報を適切に管理していない
- さまざまなデータが混在し、整合性や信頼性を保証できない
- 信頼性の低いデータ利用による意思決定
- 利用範囲を逸脱したデータの活用
これらの管理を怠ると、コンプライアンス違反、情報流失、誤った情報による顧客や社会への信頼失墜など、ビジネスとして非常に大きな問題につながり、企業として危機的な状況を招く恐れがある。
データガバナンスでコントロールしていれば、データを可視化、整流化した状態に保つことができ、品質は向上する。 個々の業務や部門間の動き方が変わり、意思決定システムが改革され、データを利用した迅速なサービスが生まれていく。
データガバナンス推進方法
データガバナンスを成功に導くためには、計画を策定してどのような組織で実現するのか、どのデータをコントロールするかなどを定める必要がある。
- データガバナンス体制、役割の定義と準備
- データマネジメントに関する遂行能力、データ全体の整合性などの評価
- コントロール範囲、目的、ゴール、ポリシーなどのデータガバナンス推進計画の策定
そして、データマネジメント活動を具体化すべく、体制やルール、プロセスを設計する。
- データガバナンスを推進するための会議体や人員配置などの具体的な体制
- データマネジメント活動を具体的に実施させるための運用プロセス
- ルール、基準など規約の事前整備
企業全体でデータマネジメント活動全体を強化するため、計画、設計後は上記に基づくさまざまな取り組みの実施が必要だ。
- データに関する課題管理と課題対応支援
- データ資産のリスク、活用といった評価の支援
- 規約の見直しと強化
- データマネジメントに関する人材育成
- 企業全体でデータマネジメントを理解してもらうための啓蒙活動や教育