昨今の新型コロナウイルス感染症の影響により、リモートワークのインフラ投資などが増えている。一方で業績の悪化など、大きなシステム開発、改修プロジェクトを凍結する企業も出てきている状況である。
大きなシステム開発投資はデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応も含まれているが、その重要な要素の一つである“レガシー”なシステムの近代化は、先送りできない問題であるため多くの企業の悩みの種となっている。
また、このレガシーはメインフレームのイメージがあるが、これは少数であり、現在数万社で稼働している旧オフコンと呼ばれていたミッドレンジコンピューターが問題となっている傾向にある。
本記事では、このミッドレンジコンピューターで現在でも利用企業数が多い「IBM i(旧System i、AS/400)」に焦点を当て、その課題と解決策を5回に渡ってお伝えするものである。
まだまだ使われているオフコン
オフコンの歴史はメインフレームに代表される大型コンピューターの下位にあたる小型コンピューターをベースに電子会計機の国産化が始まった1960年代前半に遡る。科学技術計算に用いるミニコンピューターに対し、会計などの事務処理目的の小型コンピューターを国内ではオフィスコンピューターと呼ぶようになり、各メーカーによる開発が進んでいった。
市場は1970年代後半から1980年代にかけて、全国の中小企業や大手企業の部門、工場の情報化を目的に急速に拡大し、数多くの国内メーカーが独自設計で多くの種類の製品をリリースした。
1990年代前半にオフコン市場は全盛期を迎えたが、後半に黒船である“オープン化の波”が押し寄せ、オフコン市場は縮小し、採算の取れなくなったメーカーの撤退が相次ぐようになった。
一方でオープン系サーバーの信頼性、安定性に不安を持つユーザーはオフコンを継続的に利用し現在でも数万社が使用している状況である。
国内のメーカーはほとんどがハードウェアから撤退したが、ユーザーを多く抱えていたメーカーはクラウドサービスでオフコン環境の提供を続けている。海外メーカー製品で、国産オフコンに対抗してきたIBM iは、現在1万社近い企業が使い続けており、撤退の意向は全くない。ハードウェア、OS、その他周辺技術は進化を続けており、国産オフコンとは違う道を歩んでいる状態である。