ロックインを回避--データ活用基盤にGCPを採用したセブン-イレブンの狙い

阿久津良和

2020-09-17 06:45

 セブン-イレブン・ジャパンが自社のデータ活用基盤としてGoogle Cloud Platform(GCP)を採用したことが9月9日に発表された。店頭の購買データなどをクラウドに集約し、従来のウォーターフォールで開発した既存システムから脱却している。

 グーグル・クラウド・ジャパンが9月16日に開いた記者会見でセブン-イレブン・ジャパン システム本部 副本部長 西村出氏は数あるパブリッククラウドの中でGCPを選択した理由として「サービスの拡張性やセキュリティの担保、課題の1つだったベンダーロックインされないオープン性が、われわれの方針に合致した」と説明した。

セブン-イレブン・ジャパン システム本部 副本部長 西村出氏
セブン-イレブン・ジャパン システム本部 副本部長 西村出氏

 日常的に利用されるコンビニエンスストアだが、その背景には店舗の販売時点情報管理(POS)データを筆頭に、数多くのデータが存在する。当然ながら基幹システムや既存のデータセンター上に点在したデータもあるという。

 西村氏は「(データが)サイロ化していた。リアルタイムでデータを見たいという声やデータの動きに対応したいという需要に、IT部門が対応しきれなかった」とこれまでの課題を振り返る。

 さらにベンダーロックインといった課題も同時に顕在化していることから「自分たちで(インフラストラクチャーとデータ活用基盤を)構築していくという思いを込めて」(西村氏)、リアルタイムのデータ収集・処理基盤となる「セブンCENTRAL」の運用を9月1日から開始した。

 GCPコンサルティングサービスを提供するクラウドエース(千代田区)による協力を得たセブン-イレブン・ジャパンは、データ分析の中核をなす「BigQuery」のほかに、フルマネージドリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の「Cloud Spanner」、サーバーレスでストリーム&バッチデータを処理する「Dataflow」、そしてクロスクラウドでAPIを管理するプラットフォーム「Apigee」などを活用してセブンCENTRALをGCP上に構築した。

 全国2万1000店舗のPOSレジをはじめとする各種データをデータレイクに蓄積し、データ整理した上でデータウェアハウス(DWH)に格納。さらに用途に応じてデータを取得可能なデータマートを用意して、各種サービスに用いるという。

 前述のとおりセブンCENTRALは、稼働したばかりで具体的な成果に至っていないが、将来性を検証するテスト運用では既存店舗を上回る3万店舗からのデータ収集テストに成功している。西村氏は「(セブンCENTRALの構築は)企画から実装まで約半年。コストも既存システムの開発費用と比べると4分の1から5分の1。予想以上のパフォーマンスが出ている」と感想を述べた。

 セブン-イレブン・ジャパンがGCPを選択した理由は他にもある。同社は地理情報システム(GIS)を利用した災害対策システム「セブンVIEW」をGCPで構築しており、「BigQueryを活用したアイデアもあったことから、総合的な判断でGCPの採用に至った」(西村氏)

グーグル・クラウド・ジャパン 技術部長 寳野雄太氏
グーグル・クラウド・ジャパン 技術部長 寳野雄太氏

 グーグル・クラウド・ジャパン 技術部長 寳野雄太氏はGCPのオープン性について、「ストリーミングデータ処理基盤であるDataflow自体はGCPだが、その上で動作するソフトウェアであるApache Beamも各社が関与している(オープンソースソフトウェアだ)。われわれはオープンであり続けようと努めている」と自社の姿勢を説明した。

 西村氏は現状を第1フェーズと定義付け、「下期を終える2021年2月末や新年度を迎える3月には、販売促進系データや発注データなどを活用して(次のステップへ)進化させたい」と語る。具体的には、現場店舗のシステム刷新や来店客への新たな体験価値提供、部署間の業務連携、次世代デジタルツール開発と幅広な展開を目指す。

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