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サービス開始1年が経過した楽天モバイルを分析する--ビジネス編

山本雅史

2020-10-26 06:00

 楽天モバイルがMNO(移動体通信事業者)として、2019年10月1日に先行サービス「無料サポータプログラム」を開始して1年が経ち、2020年9月30日には5G(第5世代移動体通信システム)サービスの提供を始めた。そこで3回にわたり、楽天モバイルの現状と将来をビジネスとテクノロジーの両面から解説していく。

この1年間の楽天モバイル

 無料サポータプログラムを5000人から始めた同社だが、2020年1月にはこの枠を2万人までに増やし、正式サービスとしては2020年4月8日から開始した。当初は2019年秋に正式サービスを開始して、全国的にサービスを展開するのではと見られていた。しかし、2019年春から夏には予定通りの基地局整備を行えず、総務省から行政指導を何度か受けている。

 この理由は、同社自体が基地局設置に関する経験の不足、基地局を設置するビルやエッジサーバーを設置するコロケーションのNTT電話局との調整(特にスペースや電源の問題)、光ファイバーの貸し出しなど、多くのノウハウが不足していたり、同社が考えていたペースと関係各社のペースが合っていなかったりしたことで起きたようだ。

 実際、2020年に入ってから基地局の設置は前倒しで進んでおり、3月には4733局、6月には5739局の基地局が稼働している。当初計画では、2026年3月末までに人口カバー率95%を目指すとしていたが、2021年夏頃に96%に達するほど、基地局開設を前倒しにしている。 8月に行われた楽天の2020年度第2四半期決算説明会において、三木谷浩史会長兼社長は、既に1万以上の基地局の建設が完了し、NTT回線との接続を待っている基地局が非常に多いと発言している。

楽天モバイルは、基地局建設計画を前倒しで進め、2021年3月には1万カ所を超える基地局を整備する。2020年6月時点で契約が締結し設置が進んでいる基地局が約7500カ所ある。既に整備済みの基地局と併せれば1万カ所を超える。もちろん、それ以上の基地局開設も進んでいる(楽天の決算資料より)
楽天モバイルは、基地局建設計画を前倒しで進め、2021年3月には1万カ所を超える基地局を整備する。2020年6月時点で契約が締結し設置が進んでいる基地局が約7500カ所ある。既に整備済みの基地局と併せれば1万カ所を超える。もちろん、それ以上の基地局開設も進んでいる(楽天の決算資料より)

 NTTドコモは、2019年度末時点で「Premium 4G」に対応した基地局が16万8800局、LTEサービスに対応した基地局が22万8100局あり、楽天モバイルに比べると二桁ほど違う。NTTドコモは、多数の周波数帯を持っているためこれだけの規模になると思われるが、それにしても全国津々浦々までカバーするというのは、ある意味で力業(基地局の数)といえるかもしれない。

NTTドコモは今まで膨大なコストをかけて基地局整備を行っている。LTE基地局とPREMIUM 4G基地局を併せると約40万カ所が存在する(NTTドコモの統合報告書2020より)
NTTドコモは今まで膨大なコストをかけて基地局整備を行っている。LTE基地局とPREMIUM 4G基地局を併せると約40万カ所が存在する(NTTドコモの統合報告書2020より)

 楽天モバイルのエリアに関しては、2020年10月末、12月末、2021年春以降と3段階での基地局展開を目指している。同社サイトでサービスエリアを確認できるが、2021年春以降になれば、首都圏、中京圏、関西圏で大幅に自社基地局でのサービスが開始される。中規模の都市部(福岡、仙台、福島、札幌など)でも同社自身の基地局でサービスが開始される。

楽天モバイルの基地局整備計画。濃い赤色が楽天モバイルの自社ネットワーク。2021年春以降に紫色の部分が整備される。2021年春以降も薄いピンク色のauとのローミングエリアが多く残る(楽天モバイルのウェブサイトより)
楽天モバイルの基地局整備計画。濃い赤色が楽天モバイルの自社ネットワーク。2021年春以降に紫色の部分が整備される。2021年春以降も薄いピンク色のauとのローミングエリアが多く残る(楽天モバイルのウェブサイトより)
北海道は札幌を中心に自社ネットワークが整備されるが、多くの地域はローミングのままだ(楽天モバイルのウェブサイトより)
北海道は札幌を中心に自社ネットワークが整備されるが、多くの地域はローミングのままだ(楽天モバイルのウェブサイトより)

 ただ、2021年春以降のサービスエリアにおいても、同社自身の基地局によるサービスエリアは、KDDI(au)には匹敵しない。地方や山間部などはauのネットワークに頼らざるを得ない状況が続くようだ。当初の計画では、2025年までに全国での人口カバー率を96%に引き上げ、基地局数を2万5000局以上にする予定だった。それを考えれば頑張っていると言えるが、さすがに数十年にわたって基地局を整備し続けている他社に匹敵するほどにまで1~2年で広げるのは難しい。2021年頃には、都市部ではつながるが、少し郊外に出るとつながらないといった状況になるだろう。

 もう一つ重要なのは、都市部の地下鉄やJRなどで楽天モバイルの自社基地局につながるかどうかだろう。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは、交通機関や地下街などともに「移動通信基盤整備協会(JMCIA)」を介して、自社基地局を整備している。JMCIAは、携帯キャリア各社が独自に基地局などを整備するのではなく、共用できる部分は各社で共用するという方針だ(個々の事業者との交渉が大変になるという面もある)。

 楽天モバイルもJMCIAに参加しているが、実際に東京の地下鉄やJRでのサービスを開始しているわけではなく、調整が難航しているのかもしれない。ただ、基本的なインフラ(基地局などを設置するスペース)はそろっているため、自社の周波数帯にあった設備をJMCIAと連携して導入していくしか方法はないだろう。幾つかの駅などでサービスが始まれば、加速度的にサービスエリアが広がっていくと思われる。そうなれば、大都市の地下街や地下鉄あるいは新幹線(トンネル内)で移動している間も楽天モバイルの自社基地局を利用できることになるだろう。

楽天モバイルは、JR沿線や地下鉄、地下街などの基地局整備をJMCIA経由で行うことにしている。都市部の整備はコストパフォーマンスは高いが、地方の鉄道や高速道路のトンネルなどの整備コストは跳ね上がる。この辺りは人口カバー率や接続率などを考えて整備していくだろう(総務省に提出した楽天モバイルの資料より)
楽天モバイルは、JR沿線や地下鉄、地下街などの基地局整備をJMCIA経由で行うことにしている。都市部の整備はコストパフォーマンスは高いが、地方の鉄道や高速道路のトンネルなどの整備コストは跳ね上がる。この辺りは人口カバー率や接続率などを考えて整備していくだろう(総務省に提出した楽天モバイルの資料より)

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