2019年10月に、携帯電話事業者として楽天が新規参入する。注目はそのネットワークだ。既存のインフラがないことを“逆手”に取り、楽天は仮想化を活用したクラウドベースの斬新なアーキテクチャを採用する。さらには、このネットワーク技術を他の事業者に提供する可能性もあるという。同社の代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏が2月末、スペイン・バルセロナの「MWC Barcelona 2019」で語った。
楽天 代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏
「我々がやろうとしていることは、既存の事業者とは土台から異なる」――三木谷氏は、聴衆の多くを占める“既存の事業者”を前にこう述べた。その後の記者会見では、「“携帯事業のアポロ計画”とでも言おうか」と話した。同社が2017年末にMNO(移動体通信事業者)への参入を発表して以来、三木谷氏にとっては2018年に続き2回目のMWCのステージだ。あいさつの要素が強かった前年とは違って、今回は楽天のモバイル事業の技術的な詳細を中心に話した。
三木谷氏が強調する特徴は、システムのアーキテクチャだ。通常のモバイルネットワークを構成する機器はハードウェアとソフトウェアが一体となっているが、楽天はここを分離する。「アンテナからコアまで、全てをエンドツーエンドで仮想化する。専用ハードウェアは使わない。全てがソフトウェア化され、クラウドにある」と三木谷氏。2019年10月のサービス開始当初は4G(LTE)だが、ソフトウェアベースなので容易にアップグレードできる。「サービス開始当日から“5Gレディ”だ」と三木谷氏。
楽天のモバイルネットワークはエンドツーエンドで仮想化技術を利用した
MWCの楽天ブースには、同社が構築中のシステムが展示された。例えば、無線システムを構成するRAN(無線アクセスネットワーク)は、仮想化を進めた“Virtualized RAN”として、Intelチップを搭載したサーバを展示した。RANは無線処理を担う部分で、通常はEricssonやNokiaといった通信機器メーカーが提供するソフトウェアとハードウェアが一体となったシステムが用いられる。楽天は、この分野の草分け的存在である米Altiostar Networksと協業して、RANの仮想化を実現。これにより、通常はベースバンドユニットとしてアンテナの下に置いて行う処理をデータセンターで行う。展示されたサーバ構成の場合、2台で100カ所の基地局の処理を行うという。