スペインのバルセロナで現地時間2月25〜28日に開催された「MWC Barcelona」(旧称Mobile World Congress)でも5G(第5世代移動通信システム)に関するさまざまな話題が飛び交っていたが、同イベントは今後の5Gにおける重要なマイルストーンだったと言えるだろう。
2019年の同イベントのテーマは「インテリジェントコネクティビティ」だった。このテーマは市場の状況をうまく捉えている。しかし同時に、ネットワークセキュリティをめぐる地勢的な論争に加えて、同イベントの大きなテーマとなっていた5Gなどの新興テクノロジに対する投資の財務的な実行可能性に向けられた厳しい視線がイベントに影を落としていた。本記事では、同イベントの注目点を筆者の主観に基づいて解説する。
- 5Gと人工知能(AI)、IoTによって新たなテクノロジが生み出される。今回のイベントで5Gは、2018年のイベントの時のように単独のテクノロジとして語られるのではなく、AIおよびIoTと組み合わせられ、より成熟した議論が交わされていた。そして、AIに対する過剰な期待が2018年よりもさらに薄れ、AIは単に魅力的なストーリーから、機械学習(ML)を通じてより効率的かつ自律的にネットワークを管理するための重要なツールへと変貌を遂げていた。また同イベントにおいて、IoTは「コネクテッドセンサ」という観点から主に議論されていた。こういったことは、ネットワーク管理やユースケース、財務面での検討に対する5Gのより幅広い影響を考えるとすべて納得がいく。
- 5GとAI、IoTを組み合わせるうえでの鍵となる製品が発表された。5G対応(とされる)スマートフォンが複数発表され(「LG V50 ThinQ」や「HUAWEI Mate X」「Samsung Galaxy S10 5G」など)、5Gベースステーションが披露され、インテリジェントネットワーク管理ソリューション(TelefonicaのIoT向けソリューション「Kite Platform」など)のデモが実施された。もっとも、MWCにおけるデモでは、5G対応のスマートフォンやベースステーションがスムーズなパフォーマンスや消費電力、バッテリ持続時間の点で依然として課題を抱えていることが明らかになったものの、こうした問題は5Gが成熟するにつれて克服されるだろう。
- 5GとAI、IoTの組み合わせにより、通信事業者やコンシューマー、企業などにとっての素晴らしい未来が約束される。MWCでは、5Gのさまざまな潜在的ユースケースが示されていた。多くのベンダーが、企業や社会を救う新たな万能の解決策として5Gの可能性を飽くことなく強調していた。また同イベントでは、5Gがコネクテッドデバイスやコネクテッドアセットのまったく新しいコンセプトになるということも明確に示されていた。ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)とネットワーク機能の仮想化(NFV:Network Functions Virtualization)、5Gの組み合わせにより、従来型のテクノロジ展開のシナリオを超えたシフトが引き起こされる。
- 5GとAI、IoTの組み合わせによる明るい未来は、まだ実感されていない。5GとAI、IoTの組み合わせによって得られる財務上のメリットについて、ほとんどのMWC参加者は懐疑的な見方を抱いており、それはベンダー各社が5GとAI、IoTの組み合わせを支持する熱意に勝るとも劣っていなかった。5GとAI、IoTの組み合わせに対する投資によって得られる財務上のメリットは、筆者らが会場で話をしたほとんどのユーザー企業から大きな警戒の念をもって見られていた。またコンシューマーは、5G対応スマートフォンの価格やサイズが原因で興味を失う可能性があるため、コンシューマーからの収入をベースにした投資収益率(ROI)を語るシナリオは依然として説得力に乏しい状況だ。