自動運転車の公道走行については、さまざまなうたい文句が並べられ、多くの約束がなされている一方で、難しい取り組みとなっているようだ。自動運転分野の中心的役割を果たすという使命を帯びた、英政府と業界によって設立された組織であるZenzicは、次の10年でドライバーがステアリングホイールから安心して手を離せるようにするという目標を実現する上で、英国が取り組むべき課題について分析した。
その分析によると、向こう10年で達成する必要のあるマイルストーンの数は492を下らないという。ただ自動運転車の実現によって、よりスムーズな移動と、排ガスの削減、時間の節約による総生産性の向上がもたらされる。Zenzicの見積もりでは、ドライバー1人あたりにして年間225時間もの時間が生み出される可能性もあるという。
Zenzicは、モビリティー分野においてコネクテッド化(ネットワークへの常時接続を実現する)と自動化(自律走行を実現する)というテクノロジーを一体のものとして捉えるCAM(Connected and Automated Mobility)という観点から見た英国のさまざまな現状を理解するために、100を超えるいわゆる「CAMクリエイター」から情報を集めた。公道上で自動運転車を走らせるという目標に向けて活動しているこれらのCAMクリエイターには、大学から、センサーの設計を手がけるテクノロジー企業、さらには現実世界で必要となる規則を作り出そうとしている法律関連の組織に至るまでのさまざまな企業や組織が含まれている。
2030年までのCAMのロードマップという形態をとったZenzicのレポートには、明るい材料も含まれている。492のマイルストーンのうち約半数は「ある程度の能力」が達成されており、向こう数年で成果が得られるという。例を挙げると、自動運転システム(ADS)の試験方法と検証方法の合意に向けた作業は既に開始されており、2021年に完了すると見込まれている。
同レポートによると、自動車関連の技術において英国は、ソフトウェアや自動化、試験、安全性、接続性といった分野だけでなく、センサーやサイバーセキュリティの分野で積極的にイノベーションを起こそうとしている企業の数が多いという点で特に強みがあるという。
Zenzicのテクノロジー責任者であるMark Cracknell氏は米ZDNetに対して、「自動運転車を実現するための基盤テクノロジーの開発に向けて多くの作業が進められてきている」と述べ、「われわれの最大の強みを1つ挙げるとすると、それは自動運転システム用のソフトウェアだ」と続けた。