オラクル、クラウド型のERPとEPMで機能強化--自動仕訳でAIが適切な値を提示

阿久津良和

2020-11-13 06:45

 日本オラクルは11月12日、記者会見を開催。クラウド型の統合基幹業務システム(ERP)「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning Cloud」(Fusion Cloud ERP)の機能アップデートを解説した。

 同社 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMクラウド事業本部 善浪広行氏はアイ・ティ・アールの調査結果「ITR Market View: ERP市場2020」を引用し、「2023年度には9割強がクラウド化し、そのうち6割はSaaSして提供される。われわれがこだわっているのは『ピュアSaaS』。顧客の要望に基づいた新機能を3カ月ごとにリリースし、陳腐化しない仕組みを目指している」とアピールした。

日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMクラウド事業本部 善浪広行氏
日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/HCMクラウド事業本部 善浪広行氏
日本オラクル クラウドアプリケーション事業統括 事業開発本部 ERP/SCM企画・推進 担当ディレクター 中島透氏
日本オラクル クラウドアプリケーション事業統括 事業開発本部 ERP/SCM企画・推進 担当ディレクター 中島透氏

 米本社Oracleは米国時間9月29日にFusion Cloud ERPと、業績管理の「Oracle Fusion Cloud Enterprise Performance Management」(Fusion Cloud EPM)の機能更新を発表している。日本法人 クラウドアプリケーション事業統括 事業開発本部 ERP/SCM企画・推進 担当ディレクター 中島透氏によれば、「AI(人工知能)や機械学習などのテクノロジーを業務内に取り込んで、画期的なワークスタイルを提供する」機能が加わった。

 業務の効率性を向上させるデジタル体験の文脈では、外部から取り込んだデータを自動仕訳する際に、空欄や不適切なコードを含む管理項目にAIが適切な値を提示する機能に加えて、機械学習が異常値を検知して対応結果を学習するインテリジェント・アカウント・コンビネーション機能を搭載した。互いが所有する取り引きデータを突合させる作業である“リコンサイル”時の不適合な内容を判断し、自動的に担当者へ通知するエラー・ハンドリングなど100以上の新機能を実装している。

 同社はサプライチェーンの想定シナリオとして、チャットボットとFusion Cloud ERPの連携例を紹介した。たとえば現場から購買依頼した材料の注文状況を対話型チャットで取得し、検索結果のリンクから明細ページにアクセスできるため、「現場の検索工数を大幅に削減できる」(中島氏)という。

 ビジネス洞察や意思決定を支援するインテリジェント・プランニングの文脈では、見落としがちなデータを検出して、現実の文脈に即した洞察を提供するインテリジェント・パフォーマンス管理や事業計画・予算編成とプロジェクト管理の一体化に加えて、自動予測機能をFusion Cloud EPMに搭載した。

 以前から予測プランニング機能を備えるFusion Cloud EPMだが、データインポート時に予測シナリオをもとに自動計算することで、差異を示したレポートが作成できる。同じくサプライチェーンの想定シナリオとして、中島氏は「プランニング・アドバイザーを使えば、適切なタイミングで新製品を市場に投入できる」と説明した。

 機械学習アルゴリズムで過去にリリースした類似製品の需要パターンを検証することで、既存製品の販売と衝突させないと同時に、タイミングを逸して競合他社に市場を奪取されるようなリスクを軽減できるという。

 また、従来はディスクリート(分離)型とプロセス(手順)型の2種類にとどまっていたFusion Cloud ERPだが、新たにプロジェクト型生産管理を新たに追加。受注設計生産や作業分解構成(WBS)によるモジュール/ステージ生産などへの対応を可能にしている。

 2つのSaaSについて中島氏は「業務機能を1つのデータモデルに押し込み、業務の自動化と現場データの分析によるビジネスインテリジェンスを得られる構造だ。過去に買収した企業の製品もソースコードをばらし、Fusion Cloud ERPに組み込むことで、業務と業務をつなぐデータが見えてくる」とアピールした。

 同社はアドオンを前提としたオンプレミス型ERPと標準機能を充実させたFusion Cloud ERPとFusion Cloud EPMを比較して、低コストかつ短期導入を実現するクラウドERPの利点を強調。その結果として「大企業から中堅企業まで引き合いが多く、大企業はコロナ禍を踏まえたビジネスモデルの変革でご相談いただき、中堅企業はシステムを20~30年塩漬けしているため、全社DX(デジタルトランスフォーメーション)化で導入するケースが多い」と善浪氏は説明する。

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