本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏と、ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏の発言を紹介する。
「NTTグループとしての連携はこれから“さらにさらに”強化していきたい」
(NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏)

NTTデータ 代表取締役社長の本間洋氏
NTTデータは先頃、2020年度(2021年3月期)第2四半期の決算についてオンライン形式で記者説明会を開いた。本間氏の冒頭の発言はその会見で、NTT持ち株会社(以下、NTT)が上場子会社のNTTドコモを完全子会社にすると9月に発表するなどNTTグループの再編が進む中で、NTTデータとしてどう考えているのかを問われて答えたものである。
「連携強化」を語るのは想像できたが、それを強調するように「さらに」を重ねたのが印象深かったので、明言として取り上げた。今回の決算内容については発表資料をご覧いただくとして、ここではその明言に注目したい。
その前に、会見の中で興味深い情報発信があったので触れておきたい。表1に記されているのは、同社における新型コロナウイルス感染症のビジネスへの影響について、国内外の分野別に3カ月前の想定と今回の決算時の状況におけるポイントである。こういう形の情報発信も同社のユニークなところだ。多くの企業にとっても参考になるのではないか。

表1:新型コロナウイルス感染症のビジネスへの影響(出典:NTTデータ)
話を本題に戻そう。NTTグループ再編の動きについては、2020年10月1日掲載の「NTTがドコモを完全子会社へ―NTTグループ再編の『本丸』を突き動かすものは何か」で解説したのでご覧いただくとして、本間氏はこの動きについて問われて次のように答えた。
「親子上場に関しては多様な意見があることは承知しているが、現時点でNTTデータの状態には変更がないとの認識だ。NTTは当社の株式を54%保有しているが、他の株主に対しても利益を最大化するために、今後も企業価値の向上に努めていく。それとともに、NTTグループとしての連携はこれまでにも増して、これから“さらにさらに”強化していきたいと考えている」
さらに、こう続けた。
「連携の内容は大きく3つある。1つ目は、NTTグループが展開するデータセンターやネットワーク、クラウド、セキュリティサービスなどのインフラ事業と、当社のシステムインテグレーションを掛け合わせたトータルサービスをさらに拡大していくこと。2つ目は、NTTの研究所の優れた成果を活用して当社でも優れたオファリングを作っていくこと。3つ目は、グループとしてグローバルでハードウェアなどを共同購入してコストを抑えていくこと。こうした取り組みをこれまでにも増して強化していくとともに、今後は一層、何事もPDCAのP(計画)の段階から一緒に動き、グループ全体としての戦略の一貫性を図っていくことが重要だと考えている」
今回の決算会見でこの質問があることを想定していたのだろう。本間氏の意図が十分に伝わってきた回答だった。