アルバイトの求人サイト「バイトル」を運営するディップ(港区)は、独自の顧客情報管理システム(CRM)/営業支援システム(SFA)「レコリン」で営業部門の業務効率化を実現してきたという。ディップ 商品開発本部 次世代事業統括部 dip Robotics室長 亀田重幸氏は、「現場で課題を拾い、ビジネスモデルを再整備するのがDXに至る一番の近道」と語った。
ディップ 商品開発本部 次世代事業統括部 dip Robotics室長 亀田重幸氏
亀田氏は、名刺管理サービス「Sansan」を開発、提供するSansanが10月28日に開催したオンラインイベント「Sansan Innovation Summit 2020」に「営業現場への浸透を実現した、DX(デジタルトランスフォーメーション)手法とは」と題して講演した。
ビジネスとユーザー体験(UX)。自社顧客に対するUXの改善という文脈では広く語られているが、社内でのUXの改善は寡聞にしてあまり聞こえてこない。
ユーザー体験を設計するUXデザインについて亀田氏は、「デザインは美しい見た目ではなく、課題解決の考え方」だと定義付ける。また、UXデザインについても、「使い手の心地よい体験作り(がUX部分、)課題解決すること(がデザイン部分)」(亀田氏)だからこそ、ビジネスの課題解決もデザインというキーワードが合致するという。
「営業活動は人がメインだからUXデザインが必要」(亀田氏)
ディップは2018年11月から人工知能(AI)やロボティックプロセスオートメーション(RPA)を活用して、社内業務の自動化を図る組織「dip Robotics」を設立。その一環として誕生したのがレコリンだった。
それまでの同社はCRM/SFAを導入しても営業現場は「顧客検索に10秒以上」「商談項目も多く入力が面倒」「PC版のみでVPNも面倒」「入力の意味を理解してくれない」などの理由から使用率が著しく低かったという。
UXデザインを重視して開発したレコリン導入後は、それまで日に30分近くを要した営業リストの作成や整理が10分に短縮。商談項目の入力も1日30分から1日15分に、案件や商談の進捗を管理する“ヨミ票”入力も1日20分から1日5分に、受注結果を申し込む専用サイトも会計システムとの連携で1日20分から1日10分に縮めている。亀田氏の説明によれば、「約1500人いる営業マンの利用率は99.9%。1日1時間程度の活動時間を確保した」と成果を述べた。
ディップが独自に開発したSFA/CRM「レコリン」
レコリンの完成に至るまでには、亀田氏が営業担当者に3カ月間密着して営業活動を学び、その人専用のツールを作成。亀田氏は「使いやすいツールを使うと、(皆が使った結果として)営業データの収集と活用が実現する。また、UXの追求がDXの実現につながった」とレコリンの効果を強調する。
だが、亀田氏は、この段階はデジタライゼーション(デジタル化)であり、その先にある「DXの実現方法については多く語られていない。新ビジネスの糸口はデータ活用が鍵」だと自身の私見を語った。具体的にはレコリンで得た経験から、人が使いやすいプロダクトでデータを収集し、データとビジネスをつなげるUXデザインを歯車に使うことだという。その上で亀田氏は「UXがゼロなら“データ×UX×ビジネス=”の結果であるDXもゼロ」だと、営業の現場でUXデザインを高める必要性を強調した。