人事部門にとって最大の負荷--年末調整の電子化、2020年の問題点と今後

羽鳥智喜 (Works Human Intelligence)

2020-12-23 06:45

年末調整は人事部門最大の業務

 年末調整は人事部門にとって、1年を通して最も大きな業務の一つです。短期間でほぼ全ての社員から送られてくる申告書や証明書を受け付け、処理しなければなりません。社員数が多くなればなるほど業務負担も増すため、大規模法人では年末調整への対応のために派遣社員を雇用するケースも存在します。

 一方、毎年末に膨大な工数をとられる業務であるからこそ、他業務に比べてシステム化が進んでいる領域でもありました。そのため、今回注目されている各種証明書の「電子化」が実現すれば、従来のシステム化と合わせて、ほぼ全ての業務を削減できる可能性があります。

 しかし、電子化実施の初年度となった今年、残念ながら、期待していたほどの効果は得られそうにないのが実状です。

従来の年末調整業務とは

 まずは、最もアナログな年末調整の業務の流れを振り返ってみましょう。大規模法人の場合、社員、人事部門、そして各拠点の庶務担当者の3者が業務に関わります。

  1. 申告書の準備・発送・配布【人事部門→各拠点の庶務担当者→社員】
    全社員分の申告書を用意し、発送・配布を実施
  2. 申告書への記入【社員】
    社員がマニュアルや各種証明書を見ながら申告書へ記入。控除額は自分で計算して記入
  3. 申告書と各種証明書の提出【社員→各拠点の庶務担当】
    記入済みの申告書に各種証明書(保険会社や金融機関から郵送で自宅に届いたもの)を添付して提出
  4. 申告内容の1次チェック・発送【各拠点の庶務担当→人事部門】
    各拠点で申告書と証明書を回収し、内容をチェック。記入ミスがあった場合は修正を依頼。その後、人事部門へ発送
  5. 2次チェック【人事部門】
    各拠点から回収した申告書と証明書の内容をチェック。記入ミスがあった場合は申告書と証明書を返送し、修正を依頼
  6. 提出用データ作成【人事部門】
    チェック終了後、申告書の内容をデータ登録。人事部門内でダブルチェックを実施
  7. 税務署や市区町村へ提出、申告書や各種証明書の原本保管【人事部門】

 法人により多少の違いはありますが、概ねこのような手順で業務が進みます。

年末調整システム化の課題

 このように年末調整は手順と業務量が多く、負担が大きい業務ですが、同時にシステム化を進めてきた業務でもあります。続いて、今回の電子化解禁前の時点で最もシステム化が進んでいた場合の年末調整の業務内容を見てみましょう。

  1. システム上で申告内容を入力【社員】
    前年との差分のみを追記。控除額の計算はシステムが行う。
    →人事部門における申告書の用意・発送・配布、及び社員における控除計算が不要に
  2. 申告書のデータをシステム上で提出、各種証明書は紙で提出【社員→各拠点の庶務担当】
    →証明書のみ紙で提出
  3. 証明書の提出状況を確認、発送【各拠点の庶務担当→人事部】
    内容の確認は行わず、証明書が提出されているかのみ確認
    →人事部門における入力内容のチェック業務が不要に
  4. 申告内容のチェック【人事部門】
    システム上の申告書のデータと各種証明書の内容を突き合わせ、内容を確認。修正があった場合はシステム上で差し戻し、修正を依頼
  5. 税務署・市区町村へ提出、証明書の原本のみ保管【人事部門】
    →証明書以外の紙書類の保管が不要に

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