ビジネスの方向転換におけるデータとアナリティクスの活用

今井浩 (クリックテック・ジャパン)

2020-12-07 07:00

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により日常生活が劇的に変化し、私たちは皆、仕事や家庭生活のほぼ全面的な見直しを迫られています。

 個人も企業も世界中で一斉にリモートワークにシフトしたことで、自分たちがどれだけ業務を維持し、従業員を支援し、一貫性のあるサービスを提供するための準備ができていたか、あるいはできていなかったかを自覚することになりました。

 もっぱら対面のやりとりが基本になるビジネス(小売り、旅行、接客)に突きつけられた課題は多方面にわたり、これらの業種はビジネスモデルとサービスモデルを根本から見直す必要に迫られています。

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 また、その他の業種も試練に直面しています。事前にしっかりとした計画を立て、エンドポイントのセキュリティを強化し、クラウドデータ戦略を確立していた企業の方向転換は迅速でした。一方で、こうしたことを怠ってきた企業は、すぐにギャップに苦しめられることになりました。

 今では、あらゆる企業が何らかの形で進化または方向転換をしています。Qlikは、その事業の性質上、多くの顧客やパートナーがこの状況に適応するための取り組みを目の当たりにしてきました。こうした方々の多くから、ウェブセミナーとオンラインセッションを通じて、それぞれの経験を共有していただけたことには大変感謝しています。過去6カ月のセッションで共有していただいた主な教訓とトレンドは、新型コロナウイルス感染症の収束後も、ほぼ全ての業種において、データとアナリティクスの利用方法を変え続けていくでしょう。

SaaSとクラウドへの移行:加速と定着

 フルタイムのリモートワークにより、あらゆる人がクラウドに移行しています。現在、従業員を適切に支援できるかどうかは、SaaSとクラウドの使いやすさと有効性を高められるかどうかにかかっています。

 業界をリードする企業はこうした移行をコロナ以前から既に進めていましたが、その他の企業は今になって必要に迫られ移行を急いでいます。コスト節約と柔軟性の向上を実現し、クラウドとSaaSならではのセキュリティとスケーラビリティーに満足している企業が、逆戻りする理由はありません。これは後ほど詳しく述べるように、IT部門にとって大きな分岐点となります。

 この動きからもたらされる、今後のビジネスの舵取りへの影響を考えてみましょう。一つは、ニューノーマルとしてのリモートワークの定着が挙げられます。ワクチンが開発されたとしても、多くの従業員が気に入っている柔軟でバランスの取れたこの働き方を、今さら止めることはできませんし、止めるべきでもありません。

 賢明な企業なら、職場にフルタイム出勤しないからという理由で、高いパフォーマンスを発揮している従業員にペナルティーを科すようなことはしないでしょう。仕事で重要なのは「何をするか」であって、場所ではないこと、そして能力を正しく測定できる唯一の指標がパフォーマンスであると明確になったわけです。

 SaaSとクラウドのメリットが実現し、リーダーたちは作業場所に関係なく成果を挙げられるツールを自信を持って従業員に提供できるようになりました。優れた人材を場所に縛られずに採用できる可能性も生まれました。

重要さを増すデータパイプラインとIT部門のリーダーシップ

 Qlikが2020年に実施したIDCとの合同調査は、データからインサイトを引き出す能力の高い企業ほど、最終的な収益に大きな影響力を持つことを示しています。このような企業は、ローデータをエンタープライズ対応インテリジェンスに変換する最新のデータとアナリティクスパイプラインを効果的に展開することで、意思決定を支援しています。

 しかし、大半のデータパイプラインにはギャップが存在し、データ漏れが発生します。このためデータ分析の効果が制限され、その影響力は損なわれます。また、スマートデータカタログがないことから、データの価値を評価し、最も価値あるデータソースを特定することに苦労している企業がほとんどです。この点でIT部門に強いリーダーシップが求められています。

 クラウドとSaaSに移行することで、オンプレミス環境でIT部門のセンターオブエクセレンス(CoE)を管理する必要がなくなり、その役割を見直すことができます。新しいCoEの中心業務は、最高データ責任者(CDO)と連携して、企業全体のデータ戦略を強化するためのデータパイプラインを作成、開発、管理することになります。最終的な業績への影響力を持つ強力なデータパイプラインがあれば、収益、利益、業務効率の2桁アップが実現することは、調査が示しています。IT部門の役割の進化が極めて重要なのです。

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