Intelは米国時間1月13日、最高経営責任者(CEO)であるBob Swan氏が2月15日付で退任し、新たなCEOとしてVMwareのCEOを務めるPat Gelsinger氏を迎えると発表した。Intelは競合他社からの厳しい挑戦に直面し、苦戦している。同社は最近、大々的な変革を求める物言う投資家らからのプレッシャーにさらされており、今回の発表はそういった変革の一環だといえる。
Gelsinger氏はIntelにとってなじみのある人材だ。同氏はそのキャリアのうちの最初の30年間、Intelに籍を置いており、エンジニアリング関係と上級管理職のポジションから、同社初の最高技術責任者(CTO)の地位に上り詰め、同社最大の業務部門を率いていた。同氏はかつてCEO候補として有力視されてもいたが、退社後はVMwareの有能なCEOとして8年にわたって同社の舵を取ってきた。
Intelはエンジニアリング企業だ。このためエンジニアに応え、エンジニアに認められている。つまりIntelでは、トップの仕事をする人物はエンジニアの素養を備えているべきなのだ。Gelsinger氏はエンジニアであり、腕の立つCEOであることが実証されている。これら才能の双方を持つ人材はなかなかいないが、同氏は双方の才能を有しているのだ。
Gelsinger氏の仕事は簡単ではないだろう。Intelは市場シェアを失ってきており、かつてないほどの力を持った新たな競合他社に直面し、市場の状況も変わりつつある中で苦戦を強いられている。同社は各種の幅広い製品群を提供しているが、720億ドル(約7兆4800億円)という同社の売上高の大半はx86ファミリーのプロセッサー製品によるものとなっている。そしてその製品ファミリーがプレッシャーにさらされている。Gelsinger氏はしばらくの間、蜜月期間を与えられるが、その後は迅速に大きな変革を実行しなければならない。失敗すると、同氏の在任期間は短いものとなる可能性がある。
Intelが取り組まないといけない手強い課題には次のものが含まれている。
- 製造上のジレンマ:同社は、7nmプロセスでの製品投入に難航している。そして一部のチップ製造をTSMCのようなパートナー企業にアウトソーシングしているようだが、自社内での製造はIntelの信条と言えるものになっている。Gelsinger氏はアウトソーシングする製品と、Intelの知的財産(IP)として残しておく製品のバランスを取るという、難しい采配を振るう必要に迫られるだろう。これは最大の課題の1つになるはずだ。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってあらわになったサプライチェーンの脆弱性がその舵取りを難しくする。ヘッジファンド会社であるThird Point Managementが掲げる大きな目標の1つに、Intelにおけるより多くの製造をアウトソーシングさせるというものがある。ただ、一部のチップをアウトソーシングする意味はあるが、他のチップではプロセスの優位性が競争上の利点となる場合もあるはずだ。このためForrester Researchは、敗北をここで認めるのではなく、製造上の問題を解決するべきだと確信している。