シスコ、DX推進の新戦略に基づきパートナープログラムを刷新

渡邉利和

2021-01-27 11:20

 シスコシステムズは1月26日、報道機関向けのオンライン説明会で同社のパートナー事業戦略について説明した。

 同社 専務執行役員 パートナー事業統括の大中裕士氏は「マーケットの変化に伴ってわれわれのテクノロジーもかなり進化している。こうしたものを裏付けとして持って、パートナーさまとのビジネスをどのように変革して、お客さまの成功にどのように貢献していこうとしているのか」を説明していくとした上で、まず「パートナー事業の戦略の柱」として「Perform+Transformという両輪で事業を走らせている」と説明した。

同社のパートナー戦略の柱となる「Perform+Transform」のコンセプト。従来型のビジネスを伸ばしていくPerformでは、セグメント戦略に基づいて各セグメントのユーザー企業のニーズに対応していく。また、新しいビジネスの創出を目指すTransformでは、新市場の開拓、パートナーのソリューション開発力強化の支援、CX向上の取り組みの3つ方向性が示されている
同社のパートナー戦略の柱となる「Perform+Transform」のコンセプト。従来型のビジネスを伸ばしていくPerformでは、セグメント戦略に基づいて各セグメントのユーザー企業のニーズに対応していく。また、新しいビジネスの創出を目指すTransformでは、新市場の開拓、パートナーのソリューション開発力強化の支援、CX向上の取り組みの3つ方向性が示されている

 なお、Performとは「事業成長」を指し、「われわれが持っている製品やサービスを軸としたビジネスの成長」という意味だという。一方、Transformは「お客さまに対する新たな価値を作り上げ、中長期的な変革を通じて新たな成長軸を作る」という取り組みだ。

 従来のビジネスの成長を目指すPerformの領域では「セグメント戦略」を採る。同社が以前から強みを持つ「Service Provider(サービスプロバイダー/通信事業者)」「Enterprise/Public Sector(大規模)」「MM(Mid Market)/SMB(中小規模)」というユーザーの規模に基づくセグメント分けを基本とするが、さらに最近は運用管理をマネージドサービス型で行うタイプの製品群が中小規模から大規模ユーザーにまで普及し始めていることから、新たに「Managed Serviceプロバイダー」も注力領域の1つに加え、計4つのセグメントについて「各々に適切なパートナーとともにお客さまに成功体験をお届けしていく」(大中氏)ことが基本戦略となる。

 端的に言ってしまうと、従来型のビジネスについては新しいトレンドであるマネージドサービスを採り入れつつも基本的には従来通りの取り組みを継続し、拡大に取り組むと理解してよいだろう。

セグメント戦略の4つの注力領域。従来のユーザー規模に応じた3分類に加え、新たに中小から大規模までで活用されるようになってきたManaged Serviceも独立した注力領域として定義された
セグメント戦略の4つの注力領域。従来のユーザー規模に応じた3分類に加え、新たに中小から大規模までで活用されるようになってきたManaged Serviceも独立した注力領域として定義された

 次に、Transformと位置付けられる新たな価値の創造に向けた取り組みでは、大きく「New Buying Center」「DevNet」「Customer Success」の3つの領域に分けられている。New Buying Centerはいわゆる「新規市場開拓」に相当する部分だと見てよいだろう。一方、DevNetとCustomer Successの部分は変化する市場に合わせてパートナーが新たな価値を提供できるようにする取り組みであり、大きく「DX(デジタル変革)戦略」と位置付けられている。

 背景となる技術としては、同社が数年来取り組んでいる「インテントベースネットワーキング」が挙げられる。これはIT中心の視点からビジネス中心の視点へと転換を図るもので、端的にはネットワークの設定変更などをポリシーベースでできるようにするものだ。ごく単純化してしまえば、ネットワークの構成変更などがほぼ自動化される形になる。

シスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括の大中裕士氏
シスコシステムズ 専務執行役員 パートナー事業統括の大中裕士氏

 前述のマネージドサービス型のネットワーク製品も同様だが、従来は目的に応じたネットワークの構成変更には専門の技術者による作業が不可欠であったものが、ユーザーがポリシーを明確化するだけで実際の設定変更は自動的に行えるという環境がほぼ出来上がりつつある。

 これはユーザーにとってはメリットになるが、一方でこうした構成変更作業を大きな収益源としてきたパートナーにとっては新たなビジネスを生み出す必要があるということにもなる。同社がパートナーとのビジネスを変革すると言っているのは、大雑把に言ってしまえば従来の構成変更作業に変わる新たな収益源の創出だと言えそうだ。

 DevNetは、従来ネットワークの構成などを手がけていたネットワークエンジニアにDevOpsスタイルでのソフトウェア開発スキル習得を支援する取り組みとなり、背景には、製品の機能を公開API経由で活用できるようにすることで「プログラマビリティー」を高め、新たな価値を創造することにつなげる意図がある。また、DX時代においてはCX(カスタマーエクスペリエンス)が重視されるが、Customer Successの部分ではCX向上に取り組み、ユーザー、パートナー、シスコが同じ情報を共有し、より高度なユーザー支援を実現することを目指す。

CX強化の取り組み。ユーザー向け(CX)とパートナー向け(PX:Partner Experience)の両方を統合した「PXP(Partner eXperience Platform)」で情報を共有し、AIを活用したレコメンデーションなどでユーザー体験を向上させていく
CX強化の取り組み。ユーザー向け(CX)とパートナー向け(PX:Partner Experience)の両方を統合した「PXP(Partner eXperience Platform)」で情報を共有し、AIを活用したレコメンデーションなどでユーザー体験を向上させていく
DevNetの概要。基本的にはパートナー内部の開発者を支援するためのコンテンツやコミュニティ活動が中心となる
DevNetの概要。基本的にはパートナー内部の開発者を支援するためのコンテンツやコミュニティ活動が中心となる

 既存ビジネスの部分に対応するセグメント戦略とパートナーによる新たな価値創造を目指すDX戦略を受け、グローバルでパートナープログラムの刷新を行うことも明かされた。

 従来のパートナーはいったん「Integrator」という分類にまとめられた上で、新たに設定される「Provider」「Developer」「Advisor」を加えた4カテゴリーに再編され、さらに各カテゴリーごとにGold、Premier、Selectというランクが設定される形になる。カテゴリーごとのランク認定の基準など、詳細情報については今後決定されるとのことで、年内をめどに新しいパートナープログラムへの移行を進めていく計画だという。

 新しいパートナープログラムが導入された背景には、前述の新たな価値創造への取り組みがあり、例えば、DevNetを通じてソフトウェア開発力を高めたパートナーがその実力をユーザーに分かりやすく伝えられるような体系にしたと理解できる。なお、新しいパートナープログラムのカテゴリーはビジネスモデルの違いなどではなく、そのパートナーが提供できるソリューションの種類を反映すると考えて良い形なので、実力に応じて複数のカテゴリーの認定を受けることも可能となっている。そのため、IntegratorでGold、ProviderでGold、DeveloperでPremier、AdvisorでSelect、といった具合にカテゴリーごとにそれぞれランクの認定を受ける形になるという。

新パートナープログラムのイメージ。従来のパートナーは「Integrator」に相当し、今後段階的に「Provider」「Developer」「Advisor」といった新しいカテゴリーが追加されていく。イメージとしては資格認定に近く、あるパートナーが複数のカテゴリーでそれぞれランク認定を受けることができるという
新パートナープログラムのイメージ。従来のパートナーは「Integrator」に相当し、今後段階的に「Provider」「Developer」「Advisor」といった新しいカテゴリーが追加されていく。イメージとしては資格認定に近く、あるパートナーが複数のカテゴリーでそれぞれランク認定を受けることができるという

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