本連載は、これまでIT部門やDaaS(Device as a Service)の提供事業者に向け、「DaaSとは何か」「DaaSとはどうあるべきか」について解説してきましたが、今回はユーザーも勘違いしがちな「モノのサブスク(サブスクリプション)」について解説します。
DaaSの基本的な価値は、「常に解約自由」ではありません。むしろ、継続的に利用するからこそ、価値が上がっていくことにあります。しかし、この「常に解約自由」がサブスクリプションだとか、アズ・ア・サービスだとかという誤解をしている人がかなりいます。
本連載の第3回「サブスクリプションのよくある誤解--レンタルやリースとの違いとは?」で、このように申し上げました。サブスクリプションというビジネスにおいて、重要なのは「継続性」です。リカーリング(Recurring、直訳すると「循環する」の意)と言い換えてもいいでしょう。
サブスクリプションとは、継続的に顧客との関係の中で儲けるビジネスモデルということに他なりません。中心は継続的な課金となり、その他スポットでお金を頂くこともあります。従量課金ということもあるでしょう。サブスクリプションとリカーリングの違いを、定額がサブスクリプションで、従量課金がリカーリングというような記事を見かけますが、私個人としてはあまりしっくりときません(むしろ、そのような説明の記事が多いことにびっくりしています)。
サブスクリプションという月額で少しずつお金をいただいていくビジネスは、将来的にはいわゆる「チリツモ」で大きな金額になっていきますが、それは逆にサービス提供開始当初の売り上げはごく小さいものになるということに他なりません。
よくサブスクリプションをストックビジネスだから、毎月・毎年の受注売り上げに追われることなく、チャリンチャリンと毎月・毎年決まった金額が勝手に入ってくる優雅なビジネスと思い込んでいる方がたまにいますが、とんでもありません。契約を得ても、いつ解約されるか分かりません。
むしろ、常にアップデートして価値を上げ続け、顧客の満足を得続けて、一定量の契約を獲得して、初めて利益が出るというビジネスモデルがサブスクリプションです。多くのシリコンバレーの成功者を見て、サブスクリプションビジネスというものはとても優雅なのだろうと想像するのかもしれませんが、優雅な白鳥が水面下の見えないところでは必死に水を掻いているようにサブスクリプションビジネスも顧客の声に真剣に声を傾け、常に必死にアップデートし続けて成功するビジネスモデルなのです。
さて、そのサブスクリプションビジネスですが、本連載のメインテーマであるDaaSもその1つです。同じサブスクリプションビジネスであり、既に世の中で一般的になっているSaaS(Software as a Service)と同じように、常にアップデートし続けていくことで価値を上げ続けることが何よりも重要だということは、本連載で折に触れてまいりました。しかし、クラウドサービスであるSaaSとは違い、モノ(物)があるDaaSでは、デバイスそのもののアップデート(リプレース)はそう頻繁に行えるものではありません。そのため、DaaSにはクラウドサービスや各種サポートサービスがバンドルされ、統合的に価値がアップデートされていくようなサービスとなる必要があります。
モノを伴うサブスクリプションビジネス(モノのサブスク)は、何もDaaSの専売特許ではありません。そして、DaaSと同じ悩みを抱えています。