富士通は、ネットワーク機器の製造拠点である小山工場において、ローカル5G(私設型第5世代移動体通信システム)の運用を開始した。
このシステムは、現場作業の自動化や遠隔支援など業務のデジタル変革(DX)を実現するもので、4.7GHz帯のスタンドアロン方式と28GHz拡張周波数帯のノンスタンドアロン方式で構成されている。
小山工場での各工程における取り組み
小山工場におけるローカル5Gの活用イメージ
同工場内に現場を構え、ローカル5Gをはじめとするネットワーク機器の製造を手がける富士通テレコムネットワークスでは、高精細映像やセンサーデータなどの大容量で膨大なデータを活用した効率的な技術伝承や作業の高精度化、自動化を目指している。今回、それらの実現に向けて、電波の到達距離や使用用途に応じたローカル5Gのネットワークを構築し、現場の業務へ適用していく。
建屋内や建屋間の部品や製品の運搬作業では、電波の到達距離が長い4.7GHz帯のネットワークを活用して、工場内を走行する無人搬送車とのリアルタイム通信で高精度な位置測定と走行制御を行い自動化する。工場内外および無人搬送車に搭載した高精細カメラの映像を低遅延でエッジコンピューティング環境に伝送し、AI(人工知能)解析することで3次元での高精度な無人搬送車の位置認識と走行制御を行う。
AI映像解析による組立作業の判定画面
作業者による組立作業では、広帯域で大容量のデータ通信に適した28GHz帯のネットワークを活用して、工場内に設置した多数の高精細4Kカメラで撮影した製品や作業などの映像をエッジコンピューティング環境に高速伝送する。さらにこれをAIで映像解析を行い、正しい動きをしているかをリアルタイムにフィードバックする。
AI映像解析による作業判定では、エッジコンピューティング環境とMES(Manufacturing Execution System)とを連携し、複数の高精細カメラで撮影した組立作業の映像から、AIが作業者の手、部品ケース、部品を認識し、手順に基づいて指定された部品ケースから正しい部品を取り、基板の正しい位置に実装しているかを判定する。
MRデバイスを装着してトレーニングする様子
MRデバイスに映し出された製品3Dモデル
またMR(混合現実)デバイスを活用した現場作業のトレーニングや遠隔支援も行う。工場内のエッジコンピューティング環境で製品の3Dモデルを作成し、MRデバイスにその3Dモデルと作業指示を映し出しながら、熟練者や開発者が遠隔から現場の作業者を指導・支援する。ローカル5Gを活用することで、MRデバイスへの大容量データの描画をリアルタイムに行うことができ、遠隔からの作業指導や支援の効率を向上させることができる。