同社ではすでに、2011年6月時点で13人中4人が女性や外国人だった社外取締役が2020年7月時点で10人となっている。現場のビジネスでも、日本とイタリアの技術者がともに両国の長所を生かした鉄道車両の納入を実現してきたと説明。さらに人工知能(AI)の研究開発も倫理的な側面から多様な視点を重視するため、日本やシンガポール、欧州、中国、米国と各国のメンバーがチームで取り組んでいる。
日立製作所は2020年10月時点で800人以上の女性管理職を抱えている。冒頭で述べた目標を実現するために、事業戦略を基盤とした計画を定義。リーダーの確約や組織文化、採用活動、離職率、昇進と5つの柱を掲げつつ、「現状を分析した上で戦略的KPI(評価指標)を策定し、データ収集の継続や体制強化」(Dellagiovanna氏)に努める。
他方でDellagiovanna氏は「リーダーの育成には時間がかかる。既存プログラムを見極め、開発の育成と目標の達成に注力する」と意気込みを語った。
日立製作所は2021年4月から一般社員にもジョブ型雇用制度を拡大させている。D&I施策との相関関係について中畑氏は「全社員35万人中55%がジョブ型雇用。無意識の偏見を排除するため、昇格要素を明確にすれば性別や国籍は関係ない」という。

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また、課題としたリーダー育成に対してDellagiovanna氏は「1on1やメンタリングなど直接的なコミュニケーションを通じて(リーダー候補を)選定可能な、社会変革の拡大と社内データに基づいた育成プログラムを用意する」ことを明かした。
リーダー候補に対する個別対応についてDellagiovanna氏は「コミュニケーションバイアス(につながる企業文化)が鍵を握っている。自身の価値を伝えられる公平的な場面と野心が必要だ。その期待に応えるための多様な場面を用意する」と説明した。
また多様化する社員の平等性を担保するため、「公平さを重視する。平等は結果であり、公平な機会提供が必要だ」(中畑氏)として、各ビジネス部門で試験的なプロジェクトに着手することを明らかにした。
日本市場では、性差にかかわらず技術者不足が指摘されている。Dellagiovanna氏は「STEM(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学、Mathematics=数学を)学習する女性(の少なさは)は課題の1つ。国々で異なるが、北欧やイタリアは進んでいる。女子高生プログラムなどを実施する日立財団、学生向け研究支援に取り組む日立研究所を通じて、若手教育を加速」させることで対応すると述べた。