第2回では、IT武装をした職場においても生産性が上がらない原因を、会社側の視点、社員側の視点の双方から紹介した。今回は、社員側の視点にフォーカスをし、現場のITリテラシー格差がもたらす長時間労働について実態を探る。特に、いわゆる「IT意識高い系人材」の暴走という観点に着目してみたい。
長時間労働問題の新しいファクター
2020年初春からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行とそれに伴う3度もの緊急事態宣言を機に、多くの企業はリモートワークへの対応を迫られた。元々リモートワークをする環境が整えられていた企業もそうではない企業も、半ば強制的にリモートワークをするためのIT環境の構築を求められてきたのが、この一年の動きと言えよう。
かつてはリモートワークができる環境が整わないことに対する問題がクローズアップされることが多かった。しかし、最近では「ITスキルの低い社員」「対面での業務を求める社員」にどのように対応すべきかを見聞きすることが多い。例えば、中高年世代の上司がオンライン上ではなく対面での会議を求めるため、仕方なく社員は出社せざるを得ず、リモートワークが形骸化し、結果長時間労働が改善されないという記事を目にしたり、周りで聞いたりという経験が少なからずあるのではないだろうか。
ただ、今回のリモートワーク下の環境で新たに「IT意識高い系人材」の存在が浮かび上がってきた。そして、この人材がリモートワーク下における長時間労働問題の新たなトリガーのひとつとなっているようだ。なぜなのだろうか。キーワードはITリテラシーだ。
「IT意識高い系人材」が生まれる土壌
ITリテラシーとは、狭義では「ITの利用目的と利用方法に関する、社内の常識」と言ってよいだろう。
「IT意識高い系人材」とは、ITリテラシーはそこまで高くないが、ITツールの利用スキルはそれなりに持ち合わせており、かつツール利用の積極性が高い人材を指す。要は、ITツールを使うスキルと意欲は高いが、その適切な利用方法に対するリテラシーが低い人材のことだ。このような人材は、読者の会社にも一人や二人いるのではないだろうか。
往々にして、「IT意識高い系人材」は「ITツールの導入要望をひっきりなしに情報システム部門に求める」「マイルールに固執して過剰品質な仕事をする」といった困った行動を取ることが多い。
「ITツールの導入希望」は喜ばしい側面もあるのだが、ともすると実効性を無視した、流行りものに飛びつくだけの希望も少なくない。このような要求を全て聞いていては、現場には各種アプリを含めたITツールが乱立してしまう。そのため、導入するツールは慎重に取捨選択したいところだが、情報システム部門としても、「顧客が使っていて、うちの会社が使わないわけにいかない」「このツールを入れれば、作業効率が上がるのに、許可しない理由がわからない」などと言われてしまい、渋々導入を許可するケースも少なくないようだ。
その結果、気付くとITツールが現場に乱立してしまっていたという企業は、意外に多い。情報システム部門も、その乱立したツールの使い方の全てを管理しろと言われても、さすがに難しい。このように「IT意識高い系人材」が、管理の効かない状態を生み、さらには次に挙げるような「長時間労働」が発生する土壌を作りだしている。