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暴走する「意識高い系」--現場のITリテラシー格差がもたらす長時間労働の重篤化 - (page 2)

奥秋直生 (クニエ)

2021-05-20 07:15

「IT意識高い系人材」が長時間労働する典型パターン

 「IT意識高い系人材」はITスキルの高さゆえ、自分が最高だと思うマイルールを大切にして仕事しがちだ。しかし、そのマイルールに基づいてITツールを使うことが目的化してしまい、往々にして非効率な業務をしているケースも多い。

 例えば、最近の必須ツールであるチャットツールはいい例だ。「気になったことはすぐにチャットをする」というマイルールに基づき、考えもまとまらないままチャットを送り、ダラダラとしたチャットに周りを引きずり込むタイプの人がいる。これなど、自身もそして他の社員も、逆に中途半端なコミュニケーションに時間が取られてしまい、非効率だ。しかし本人は、「迅速な情報シェア」にご満悦だったりする。すると、当たり前だが本来実施すべき仕事は後回しになり、作業に取り掛かるのは業務時間後の夕方からとなり、長時間労働が発生してしまうのだ。

 チャットだけでなく、ウェブ会議でも同じようなケースは見受けられる。「IT意識高い系人材」の悪い癖として、A4用紙1枚、30分で作り終わるような資料に、求められてもいない装飾や動画ツールで付加価値を加えて、疲弊していることなども良くある。本人は意識高く、マイルールに基づき悪気も無く、最新のITツールを利用して一生懸命に仕事をしている。しかし、組織全体から見ると、生産性の低い長時間労働をしているだけである。

「IT意識高い系人材」の長時間労働防止に必要なITリテラシー

 ここまで見てきたように、長時間労働問題はこれまでITツールの不足やスキルの未熟さの観点から指摘されてきた。しかし、最近はそれに加え「IT意識高い系人材」がITツールの便利さが上がったがゆえの無駄な業務を行うという状態が生まれており、組織の長時間労働問題への対応をさらに難しくしている。

 また、面倒なのは後者のような人材は、社内では「頑張っている人材」として認められていたりして、組織全体で「本当は無駄な動き」が助長されている点だ。これは、もはやスキルの問題にとどまらず、広く言えば組織風土の問題ともいえる。

 この状態を変えていくためには、社員がITツールにおぼれてしまわないように、会社として社員のITリテラシーを高めていくことが必要になる。簡単に「便利なツールだから、どんどん使おう」という世界観から、「便利なツールをスマートに使う」ことを実現できるよう、社員の考え方を変えていくことに力点をおくべきだ。

 具体的には、会社として求めるリテラシーをわかりやすく定義し、本当にそのリテラシーに則って仕事ができているのかチェックし、改善していくことが肝になる。もちろんそのために、このリモートワークの中で乱立してしまったツールを一度整理し、「暴走できない土壌」を作ることは大前提として重要だ。

 「色々なツールを知っている」「ツールを使えるから偉い」「頑張っているから偉い」といったような価値観は、「IT意識高い系人材」を次々と生み出してしまう恐れがある。それを避けるためには、自社のITリテラシーを定義し、社員の考えや動きを揃えるための取り組みが、これからは必要になる。また、このような試みは、重篤化が進む長時間労働問題に対応するために、欠くことができない土台になるだろう。

 今回は、「IT意識高い系人材」が暴走することで、新たに生まれてきた長時間労働を扱った。次回からは、リモートワーク中心に働き方が変化してきた潮流を踏まえた、テクノロジーや働き方のトレンドを紹介する。

(第4回は6月上旬にて掲載予定)

奥秋 直生(おくあき なお)
クニエ ヒューマンキャピタルマネジメント担当
コンサルタント

東京大学文学部で日本近現代史を専攻、卒業後から現職。主に、組織、人材に関わるプロジェクトに従事。ネット広告、小売、IT系企業、公共団体などに対して、人事制度設計、人事制度統合(PMI)、意識や行動変革、タレントマネジメントシステムの導入と運用支援などのプロジェクトに従事。組織、人材戦略の実行力強化のため、人事制度の策定から人材の意識、行動変革、ITによる実行力強化まで一貫したプロジェクト経験を持つ。

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