企業はWindows 11をどう受け止めるべきか

山本雅史

2021-07-01 06:00

 Microsoftは、6月24日(米国時間)に「Windows 11」をオンラインで発表した。発表会はコンシューマー向けの機能紹介が中心となり、企業ユーザーにとってどういった意味を持つのか、発表会の映像でははっきりしなかった。本稿では、その後に公開された情報などをまとめ、企業にとってWindows 11はどのような意味があるのか? 早急に移行すべきなのか?――などを分析する。

企業は時間をかけてWindows 11への移行を検討すべき

 「最後のWindows」と大々的にいわれて登場したWindows 10(2015年7月29日にリリース)から6年が経ち、Windows 11が2021年後半に登場する。ただ、Windows 11は、従来のWindows OSのアップグレード(XP→Vista→7→8)といった有償でのアップグレードとは異なり、Windows 10からWindows 11へのアップグレードは無償で行える。Windows 10を利用している企業は、Windows 11の無償アップグレードの対象になる(具体的にはWindows 10 バージョン1909以降が対象であり、それ以前のバージョンのWindows 10の場合は、いったん最新のWindows 10にアップグレードしてから、Windows 11にアップグレードする必要がある)。

 ただし、サポートが終了しているWindows 7や、2023年にサポートが終了するWindows 8などからのアップグレードが無償で行えるのかは、2021年6月末の時点では不明だ。Windows 10の無償アップグレードでは、Windows 7/8が対象だったことを考えれば、Windows 11への無償アップグレードの対象となるのはWindows 10だけだろう。公式には、Windows 7/8からWindows 10への無償アップグレードは終了しているが、2021年現在でもWindows 7/8のプロダクトキーを使ってWindows 10をアクティベートすることができる。このため、Windows 7/8のPCが残っている場合は、まずWindows 10にアップグレードすべきだろう。

 Microsoftは、Windows 11の発表前に、Windows 10(Home、Pro、Enterprise、Education)のサポート終了日を2025年10月14日と発表している。企業では、Windows 10のサポート終了となる2025年10月14日までにWindows 11に移行する必要がある。ただし、Windows 10から提供が始まったLTSB(Long Term Service Branch)は、サポート期間が10年間となっているため、2021年春に提供されたWindows 10 21H1のLTSBは、2031年までサポートされることになる。Windows 10 LTSBを全面的に導入している企業は少ないので、やはり多くの企業が2025年にはWindows 11への移行を強いられるだろう。

Windows 10は2025年10月14日にサポートが終了する。EnterpriseやEducationも同じスケジュールだが、LTSBは別扱いだ
Windows 10は2025年10月14日にサポートが終了する。EnterpriseやEducationも同じスケジュールだが、LTSBは別扱いだ

 Windows 11のテストバージョンの提供が7月中に始まるため、企業で利用しているアプリケーションなどの互換性などはこれからテストすることになる。

 Windows 11の名称はMicrosoftのマーケティング面から名付けられたものであって、当初「Windows 10X」などの名称で開発されていたWindows 10のアップグレード版をリネームしたものだ。このため、Windows 10からのアップグレードやアプリケーションの互換性については、大きな問題がないだろうと予測される。ただ、Windows 10の年2回のアップグレードにおいては、細かな部分でいろいろトラブルが出ることがあるため、企業のIT管理者はWindows 11のテストを先行して行い、2025年までには企業内のPCをWindows 11にアップグレードすることになるだろう。

 また、Windows 11のリリースによって、MicrosoftがWindows 10から導入している「Windows as a Service(WaaS)」というコンセプトを捨てたわけではない。Windows 10からWindows 11への無償アップグレードが用意され、Windows 11も年1回のアップグレードが提供されることになっている。Windows 11自体のライフサイクルがどうなるかははっきりしないが、古いPCでのWindows OSのサポートを中止するために、将来的にWindows 12が提供される可能性もある。その場合でも、Windows 11からWindows 12への無償アップグレードが用意され、Windows 12も一定の間隔(年1回など)でアップグレードが提供され、WaaSというコンセプトが保持されるだろう。もしかすると、Windows 11などのメジャー番号の変更は、古いPCでのOSのサポートに一定の区切りを付けるための方法なのかもしれない。

 Windows 10のサポート終了が2025年に設定されていることを考えれば、Windows 10の最初のバージョンがリリースされて、10年後になる。これは、メインストリームサポート5年、延長サポート5年の合計10年ということにマッチする。もしかすると、Windows 11も2026~2027年頃にWindows 12へのアップグレードが行われるのかもしれない。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]