ITリーダーが、世間で喧伝されているような人工知能(AI)や機械学習の優れた効果を実現するために必要な技術を選択し、使いこなすにはどうすればいいのだろうか。AIと機械学習に期待されるような成果を上げさせるには、エコシステム、データ、プラットフォーム、人などのあらゆる要素を適切な場所に配置し、正しい方向に動かさなくてはならない。
ITリーダーが、AIやMLをすぐにでも欲しいと無茶振りをする人たちをなだめながら、それらの技術に効果的に取り組む方法がある。
アナリティクス製品企業であるSASが最近、MIT Sloan Management Reviewと協力して発表したレポートでは、企業がAIや機械学習に取り組む際の新しい方法論である「ModelOps」を提唱している。最近では「MLOps」や「AIOps」といった「~Ops」という言葉がたくさん登場しているが、ModelOpsはMLOpsやAIOpsとは異なり、ツールやプロセスの集合というよりは、さまざまなAIや意思決定モデルを運用可能にするまでの過程を効果的に進めるための「考え方」だ。
ModelOpsが重要なのは、モデルがアルゴリズムを記述するメカニズムであり、AIや機械学習でビジネスバリューが継続的に得られることを保証するため中核的存在だからだ。ModelOpsは「Model Operationalization(モデルの運用化)」を短くしたもので、 モデルのライフサイクルとガバナンスに注目して、開発から展開までのプロセスを加速することを目的として、データサイエンスのラボで生み出されたAIのモデルを、できる限り短時間でIT部門で運用できるようにするためのアプローチだといえる。
SASで英国とアイルランドのデータサイエンス責任者を務めているIain Brown氏は、レポートの中で、AIと機械学習の運用を実現するにあたっては、多くのことがIT部門にかかっていると述べている。「データサイエンティストがいくら革新的で素晴らしいものを作っても、それが既存のエコシステムやインフラに展開されない限り(通常の場合、それにはIT部門の関与が必要になる)、その作業には意味がない。データサイエンスコミュニティやAIチームは、IT部門や事業部門と密に連携を取るべきであり、確実に作ったものを運用につなげるには、両者をつなぐパイプになって、直面している問題を明確に把握し、定義することが重要になる。それを厭えば、プロセスはバラバラになり、価値を生み出すことも難しくなるだろう」と同氏は言う。