英国で公表された新しいレポートによれば、人口構成比に合わせてIT分野で50歳以上の人々に再教育を施せば、英国のIT専門家を11万9000人増やすことができ、デジタル人材不足を解決するための「大きな一歩」になるという。
この英国コンピューター協会(BCS, The Chartered Institute for IT)が実施した調査で、英国では、2020年に50歳以上のIT専門家1万3000人が失業状態にあったことが明らかになった。
同時に、英国の労働者に占める50歳以上の割合は31%であるにも関わらず、IT関係の職業では、50歳以上の労働者が22%しかいないことも分かった。
BCSによれば、IT分野の労働者の年齢構成が生産年齢人口全体の構成と同じであれば、50歳以上のIT専門家は今よりも11万9000人多いはずであり、全部で48万人になるはずだという。
BCSは、英国がコロナ禍から立ち直ろうとする中、デジタルスキルを持つ人材の不足が深刻化していることを考えれば、テクノロジー業界で働く年長の労働者が少ないことは「この集団に再教育が必要であることを強く示唆」していると主張している。
BCSソサエティボードのチェアであるKathy Farndon氏は、「デジタルスキルに対する需要は今後も引き続き高い状況が続くが、これは単にIT業界の仕事が増えているだけでなく、コロナ禍によってビジネスがデジタル化されざるを得なかった結果として、あらゆる職業でデジタルスキルが必要になっているためだ」と述べている。
「現在では、企業の70%近くが適切なスキルを持つ労働者を見つけるのに苦戦しており、そのことが英国産業に多額の損失を与えている」
BCSによれば、2020年には50歳以上の無職のIT専門家が約1万3000人いたが、これを失業率に換算すると3.4%に相当するという。これに対して、16~49歳までのIT専門家の失業率は2.2%だった。2019年には50歳以上の無職のIT専門家は8000人にとどまっており、状況が大きく悪化しているという。
その原因は、50歳以上の人材が「デジタルネイティブ」ではないことや、そのため若い世代よりもテクノロジーに慣れていないことなど、いくつも考えられる。
ただし、BCSの政策担当ディレクターであるBill Mitchell博士(OBE)は、年齢による差別も要因の1つだと述べている。「私たちはBCSの会員から、技術的な仕事に応募する際に、年齢による差別に直面することがあるという話を聞いている」とMitchell氏は言う。