SAPジャパンとジャパンSAPユーザーグループ(JSUG:ジェイサグ)は9月8日、ビジネス書籍『~事例から学ぶ~SAP S/4HANA導入がもたらす企業のビジネス変革』の発行に合わせてプレスセミナーを開催。同書で紹介されているERP(統合基幹業務システム)「SAP S/4HANA」を活用したビジネス変革事例を説明した。
JSUGは、SAPの顧客企業が運営するユーザーコミュニティー。「SAPソリューションに関する最新情報の共有と研究」「会員相互の親睦・交流」「SAPの戦略や製品への影響」を主な目的として1996年に発足した。2021年4月1日時点で566社が加盟しており、産業/機能/地域別の部会やコミュニティーで日々活動している。
同書は、国内企業14社、海外企業4社におけるS/4HANAの採用背景や導入時のポイントを説明した事例集。JSUGのウェブサイトから、ダウンロードすることができる。
セミナーでトラスコ中山は、同書で紹介されているビジネス変革事例の詳細を説明した。工場や建設現場で使用する工具などを扱う専門商社の同社は、ビジネス変革において自社だけでなくサプライチェーン全体の利便性向上を図った(図1)。見積業務の自動化のほか、製造メーカーにおける業務のデジタル化、販売店での素早い情報収集、ユーザーによる商品選定の簡易化などを可能にしたという。
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トラスコ中山は、ビジネス変革には基盤の構築が不可欠だとしている。JSUGの会長で、同社 取締役 経営管理本部長 兼 デジタル戦略本部長の数見篤氏は、「基盤の構築は家の1階部分に当たり、2階が新たな価値の提供と言える。1階部分でS/4HANA(図中央)を活用し、2階の『クラウド機能』(図右上)ではアプリケーション開発基盤『SAP Cloud Platform』を使っている。この仕組みにより、データをしっかりと集約して分析することができる」と説明した。
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数見氏は、成果の一つとして人工知能(AI)を活用した商品の自動見積アプリケーション「即答名人」を紹介。これまで同社は毎日、販売店からファックスや電話で見積依頼を受け、長い時は回答に丸1日かかっていた。即答名人により、販売店は同社のウェブサイトを通じて依頼し、5月時点で見積もりの29.1%をAIが行えるようになり、合計で3868時間が削減された。AIが見積もりできる割合は、徐々に増えているという。
ビジネス変革の取り組みにおいてトラスコ中山は、デジタル推進部の従業員を各部署に配属し、各部署に計61人のDX(デジタル変革)オフィサーを設置。デジタル推進部の従業員とDXオフィサーが連携することで、各部署にDXを普及させる体制を構築している。「大事なのは、特定の部署だけでなく、全国の部署、全従業員が同じような目線になること。デジタル基盤のもと新たな価値を創造する中で、従業員にその価値を実感してもらうことが重要」と数見氏は語った。