伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、東京工科大学と分散処理に関する共同研究を進めると発表した。ネットワークに接続した多数の端末やデバイスを連携してスーパーコンピューター並みの計算能力を実現する「グリッドコンピューティング」と呼ばれる分散処理の技術を採用することで、計算負荷の高い処理をスマートフォンに分散して実行する手法を開発する。
東京工科大学は、高性能なコンピューターに関する知見を活用して手法の開発や有用性の評価を行い、CTCは大規模システムの構築や運用で培った実績に基づく商用化を検討する。2021年12月30日まで共同研究を行い、2022年4月の商用化を目指す。
スマートフォンは、企業が一定数をIT資産として保有して従業員に貸与している場合も多く、夜間や休日などの未使用の時間が活用できるようになれば、IT資産の利用効率も向上する。スマートフォンは年々高性能になっていることもあり、人工知能(AI)やデータ分析で必要となる負荷の高い処理を既存資産で分散して処理することで、コストを押さえつつシミュレーションや予測の高速化を図ることが可能となる。
共同研究では、東京工科大学コンピュータサイエンス学部 石畑宏明教授の研究室で、スマートフォンを使用したグリッドコンピューティング環境を構成し、通常は高性能なサーバーを必要とする「AIを用いた株価予測プログラム」を用いて環境の性能を評価する。さらに、株価や為替レートなど24項目のデータからの翌日の株価予測を通して、分散の程度に応じた処理時間や通常の環境との差異などを確認する。AIを用いた株価予測プログラムは、同学部の瀬之口潤輔教授が2020年に開発した、株価や為替レート、金利、 商品価格などの公開データをAIが分析し、翌日の株価を予想するというもの。
今後、CTCが提供するIaaS(Infrastructure as a Service)型クラウドサービス「TechnoCUVIC」の活用も検討する。金融分野の取引リスク管理、株や債券といった市場性商品の価値予測など、大規模な計算が必要なシステムへの対応も視野に共同研究を進めていく。