東京海上日動火災保険(東京海上日動)と応用地質は、台風や集中豪雨などによる浸水被害を可視化する防災サービスの開発を開始した。
開発には防災IoTセンサーが取得するデータ(浸水の高さ)と3D都市モデルを活用する。3D都市モデルを用いることで、2次元の地図では伝えきれない臨場感を実現し、浸水対策や避難計画の実行につながるとしている。

冠すいっち(出典:東京海上日動、応用地質)
サービス開発に当たり、両社は7月から過去の浸水履歴やハザードマップの情報を元に福岡県久留米市内の水災リスクを分析し、リスクの高いエリアにある保険代理店に、冠水センサー「冠すいっち」(応用地質の防災IoTセンサー)を設置してきた。
8月に発生した豪雨では、同市で8月14日4時46分までの1時間に72.0ミリという8月の観測史上最大の雨が観測された。冠水センサーの設置場所では、同日3時29分に4cm以上の冠水を検知、4時41分には45cm以上に上昇、7時27分に冠水が解消(4cm未満)したと検知した。
検証の結果、冠水センサーから得られたデータが実際の浸水状況や浸水深と整合していることや、事前に登録した関係者にアラート情報がリアルタイムで配信されたことなどが確認できた。東京海上日動で既に活用している人工衛星データによる浸水エリアの特定や浸水深解析の精度向上にもつながることも確認している。
今回は防災IoTセンサーで収集したデータ、気象データ、ハザードデータなどと3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」を組み合わせて開発を進める。

福岡県久留米市の雨量・気象警報と冠水センサーの検知状況(2021年8月)(出典:東京海上日動、応用地質)
開発したツールを活用し、地域特性に応じた自然災害対応力向上支援(自治体向けサービス)や、拠点のリスクを可視化することによる事前防災対策・意思決定支援(企業向けサービス)などのサービスを開発していく。
両社は今後、高度な流体解析技術やリアリティーのある可視化技術を取り入れて、データ活用の高度化を目指す。また、自治体から地域住民への効果的な防災情報伝達や企業からステークホルダーに対する災害リスク説明を高度化するリスクコミュニケーションツールの開発を進める。

センサーが 4cm の冠水を検知した時点(左)とセンサーが 45cm の冠水を検知した時点(右)(出典:東京海上日動、応用地質)