NEC、2024年3月期決算は増収増益--旺盛なITサービス需要で高水準の成長

大河原克行

2024-04-30 06:00

 NECが4月26日に発表した2024年3月期の通期連結業績は、国内ITサービスの旺盛な需要が下支えとなった好調な内容だった。国内ITサービスの売上収益が前年比10.2%増の1兆6137億円、調整後営業利益が396億円増の1893億円の高成長を遂げ、2024年1月公表値に比べ上収益で717億円、調整後営業利益で223億円それぞれ上振る実績だ。調整後営業利益率でも11.7%という高い水準を達成している。

NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏(左)と取締役 代表執行役Corporate EVP 兼 CFOの藤川修氏
NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏(左)と取締役 代表執行役Corporate EVP 兼 CFOの藤川修氏

 取締役 代表執行役社長 兼 CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏は、「国内ITサービスは受注高も前年から堅調な状況が続き、むしろ、私たちのリソースが心配なぐらい」とうれしい悲鳴を上げる。


 2023年度の国内ITサービスの受注状況は、前年比2%減と厳しい状況に見えるが、これは前年度の高い水準をそのまま維持しているという点で評価できるものだという。また、事業のボラティリティが高いNECファシリティーズを除けば前年比1%増であり、さらに、第3四半期で4%増、第4四半期で2%増とここにきて前年実績を上回る形で推移していることにも注目しておきたい。


 また、国内の業種別受注状況は、エンタープライズが5%増となっており、このうち金融が16%増、製造が3%減、流通・サービスが3%増となっている。製造の前年割れは、採算性の観点で案件を選別しているという明確な理由があり、最優先とする収益性改善で効果が出ているという。また金融の高い伸びは、前年度の高水準をさらに上回る状況だ。森田氏も「2023年度は金融分野で意思決定や投資の方向性が進んだ。これがNECの受注の伸びを支えた」と説明する。

 さらに、「これから製造のモダナイゼーション(最新化など)やサプライチェーンの見直しに伴うIT投資が増える。政府のデジタル化も2024~2025年度が勝負になる」とコメント。NECは、2024年度の国内ITサービスの売上収益で前年比2.2%増の1兆6500億円、調整後営業利益で87億円増の1980億円を見込んでおり、国内ITサービスは、当面の間旺盛な需要が続くとの予測だ。


 もう一つNECのビジネスで旺盛な需要に支えられているのが、社会インフラセグメントに含まれる「Aerospace and National Security(ANS)」だ。

 ANSは、航空宇宙および国家安全保障領域に関わるICTソリューションを提供しているビシネスユニットで、2023年度の売上収益は前年比12.6%増の2761億円、調整後営業利益は79億円増の335億円と高い成長を見せている。2024年度も売上収益で前年比23.1%増の3400億円、調整後営業利益で35億円増の370億円と、引き続き高成長を維持する見通しとなっている。森田氏は、「ANSは政府の防衛予算増加により年間5000億円超の受注を獲得できた。2024年度も4000億円の受注を目指す」と述べる。

 防衛分野は、収益性の観点で企業にはあまりメリットがない事業領域だが、政府の方針転換により収益確保という点でNECにとって魅力がある市場に変わってきた。

 森田氏は、もともと防衛領域ビジネスの収益性が低いこと、先行きが見えないこと、開発投資の努力が報われないことなどの理由から撤退する企業が相次ぎ、「日本国民の1人として憂いていた」とし、「国の政策が明確になり先端技術を提供する企業に対しては、最大15%の利益を許容するといった動きも始まった。これは撤退企業を減らすことにつながり日本の経済安全保障に資することにもなる。日本企業には、先端技術開発で欧米には劣らない部分がある。これは日本だけでなく世界的な経済安全保障に貢献できることになる。NECは長期的視点でこの分野への研究開発投資を進める」と話した。

 ANSの2023年度の調整後営業利益率は12.1%で、2024年度も10.9%を計画しており、2桁台の利益率を維持するビジネスになっている。「ANSは12%の営業利益を確保できる事業にしていく」と森田氏。ANSが利益創出事業として成長できれば、NECの体質強化にもつながる。

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