新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらしている長期的な影響によって、非接触/非対面をうたう企業が増え、顧客、そしておそらくは従業員もシステムとのやり取りによって必要なものや、依頼したものを手にするようになってきた。その結果、優れた顧客/従業員エクスペリエンスを実現するために必要となる知能を備えた人工知能(AI)や機械学習(ML)向けの発話能力、すなわち対話型AIが重要となってくる。
Deloitteは最近、急速な技術発展を遂げてきている対話型AIという市場の今後を評価するために、同分野の特許を分析した。
DeloitteのSherry Comes氏率いるアナリストチームは、「対話型AIの急速な普及は、チャットボット開発のさまざまな段階におけるイノベーションによって推進されていきそうだ。こうしたイノベーションによって、チャットボットの創造と訓練が迅速化されるとともに、複雑な要求をパーソナライズされたかたちで効率的に取り扱えるようになる可能性がある」と記している。
Zendeskの機械学習担当ディレクターであるChris Hausler氏は、対話型AIがAI技術の画期的な応用事例だという点に同意するとともに、「2020年には、自動化されたボットによって顧客とのやり取りが81%という大幅な増加となった。これらが素晴らしいエクスペリエンスをもたらす上で鍵となり続けるのは疑いの余地がない」と述べた。
Deloitteが対話型AIのベンダーから得たデータによると、「対話型エージェントによって扱われたやり取りの量は、複数の業界で最大250%増加したことが示されている(中略)およそ90%の企業が苦情を解決する時間の短縮につながったと述べ、80%以上が対話型AIソリューションの採用によって通話処理の量が増加したと述べている」という。
Hausler氏は、AIを活用したメッセージ処理によって「企業は24時間365日の顧客対応が可能となるため、処理量が急増するような場合には特に役立つ」と述べ、「AIは、顧客とのデジタルなやり取りの増加を管理できるため、特に業務の規模拡大に役立ってきている」と続けた。
その一方で課題はまだ山積みとなっている。とは言うものの、業界関係者らは楽観的に捉えている。
DeepBrain AIの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のEric Jang氏は、「AIが成功し、成長している分野の1つに顧客サービスがある。ここではAIが顧客サービス担当者の生産性と効率を引き上げる上での支援を提供するために用いられている。ただ、こういったAIのアバターは、『AIヒューマン』の創造を通じて、できる限りリアルなものになっている必要がある。AIヒューマンとの対話は、長きにわたってSFの世界の特徴だった。しかし今では、特に顧客サービスの分野において現実のものとなっている」と述べた。