米Oracleは、現地時間11月3日に人工知能(AI)の新しいクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure AI」(OCI AI)の提供を開始した。日本時間19日に取材に応じたサービス責任者のElad Ziklik氏は、「ライバルを圧倒する性能を追究するというより、普段の業務に使えるものを目指している」と述べた。

Oracle クラウドプラットフォーム部門 AI/データサービス プロダクトマネージメント担当バイスプレジデントのElad Ziklik氏
OCI AIは、事前学習済みデータを使うことで、Pythonなどを扱えるスキルを持つ開発者なら誰でも、文字や画像、音声、映像などの非構造化データや構造化データの認識、識別、分類などのAIを使えるようにするサービスという。主な機能は下記になる。
- OCI Language:テキスト分析機能。料金は100万文字当たり約30円。センチメント分析やテキスト分類、固有表現抽出などが可能
- OCI Speech:リアルタイムでの音声認識機能。文字書き起こしやインデックス作成などが可能
- OCI Vision:画像認識機能。監視、欠陥の検出、独自データによるドキュメント処理などが可能
- OCI Anomaly Detection:異常検出機能。「MSET2」アルゴリズムをベースとし、不正検出や機器故障予測などが可能
- OCI Forecasting:時系列予測機能。機械学習と統計アルゴリズムで需要や収益、リソース要件など予測可能
- OCI Data Labeling:AIモデルの開発に使う学習データの分類機能。OCI Vision、OCI Data Scienceサービスなどに使用し、モデル構築の一貫性を担保
Ziklik氏によれば、当面の対応言語は英語などだが、今後1年をかけて日本語や韓国語、中国語などに対応させる。日本語対応は、2022年初頭からOCI Language、OCI Speech、OCI Visionで順次実施するという。

「Oracle Cloud Infrastructure AI」の構成
多数のオープンソースコミュニケーションの成果あるいはパートナーサービスとREST API経由でインテグレーションできるようにしており、日本の大手システムインテグレーターとサービス連携の検証に着手したという。OCI-AIを組み込んだ財務管理アプリなどでは、領収書データから記載内容の識別、抽出、仕分け、項目などへの反映といったプロセスが自動化されるような効果が期待される。

OCI Language、OCI Speech、OCI Visionで構築するデジタルコンテンツ管理サービスの例
また、業種別機能も提供する予定で、まずは健康医療、製造、金融、小売向けに展開するという。業界の専門用語や同じ語句でも一般とは違う意味合いを考慮したデータの識別、分類などを特徴付ける。Oracleの各種SaaSあるいはNetsuiteにも組み込み、開発者以外のユーザーでもノーコード/ローコードのアプローチで、AIモデルを自分の業務環境に簡単にアレンジできるようにするという。
Ziklik氏は、Microsoftで14年間コグニティブサービスの開発を担当し、2021年にOracleに入社したという。テクノロジー企業間でのAI開発が活況する中で、MicrosoftとOracleのAI開発の違いについて聞かれたZiklik氏は、「目標が違う。Microsoftの方法は、GoogleやAmazonなどよりすごいもの、Kaggleのコンペに勝利するような至上最高にクールなAIを追究するものだった」と振り返った。
Ziklik氏の見解では、現在のAIに対する需要は、日常のビジネスシーンに使えることだという。「Oracleはデータベースやビジネスアプリケーションを提供しているから、普段の仕事に使えるAIもやりやすい」と述べる。
「Microsoftの方法が悪いわけではないが、自分の仕事で使えるようにするには手間がかかる。今の私の仕事は日常業務に役立つAIの開発で、それが私の作りたいもの。だが最終的に、MicrosoftのAIもOracleのAIも、同じように誰もが簡単に使えるようになる。現在はその途中で道のりが違うに過ぎない」