企業向けIT市場では今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要な取り組みとして、既存の基幹システムの刷新が大きな課題となっている。その急先鋒が「クラウド化」だ。が、その市場の動きが分からない。そこで提案したい。多くの基幹システムユーザーを持つOracleに今後、自社の事業動向から「基幹クラウド率の推移」を明示してもらいたい。
5割を超える企業が5年以内に基幹システムをクラウド化へ
写真1:筆者の質問に答える日本オラクル 取締役執行役社長の三澤智光氏
Oracleは周知の通り、多くの企業の基幹システムのデータベースとして「Oracle Database」を提供しており、特に大手企業の基幹システムの刷新についてはOracle Databaseをどう取り扱うかが大きなポイントになっている。
逆に言えば、Oracle Databaseの動向を追うことで、多くの企業の基幹システムの刷新状況を捉えることができる。そう見てきた筆者は以前より同社が発信する関連情報に注目してきた。
そんな折、日本オラクルが先頃オンラインで開いたクラウド事業の最新動向に関する記者説明会で、同社 取締役執行役社長の三澤智光氏が筆者との質疑応答で興味深い発言を行ったので、ここではその内容を紹介した上で、筆者から提案を申し上げたい(写真1)。
ちなみに、その会見では、基幹システムをクラウド化するOracleならではの方法について説明があった。その内容については、関連記事をご覧いただきたい。また、同社のクラウドプラットフォーム「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」によって基幹をはじめとしたミッションクリティカルなシステムをクラウド化した最近の事例として表1を示した。同社ではこうした事例を積極的に発信して、基幹システムのクラウド化への動きを促進したい考えだ。
では、質疑応答でどんなやりとりを行ったか。その前提として、三澤氏は表1を説明したところで、「ミッションクリティカルなシステムのクラウド化は着実に進みつつあるが、さまざまな課題があるとの見方も多く、全体からすると移行はまだまだ進んでいない」と述べた。
表1:ミッションクリティカルなシステムをクラウド化した最近の事例(出典:日本オラクル)
このコメントに反応した形で、筆者は質疑応答で「今はまだ進んでいない基幹システムのクラウドへの移行が、50%を超える時期が来るとしたらいつ頃になると見ているか」と聞いた。すると、三澤氏は次のように答えた。
「私の見立てでは、これから5年以内に50%を超える。というのは、これから5年の間に大半の企業は基幹システムにおいて特にハードウェアのサポート終了時期を迎え、システムをどのように更新するのかという判断に迫られる。その際、オンプレミスのままにするのか、モダナイズしてクラウドへ移行するのかという2つの選択肢があるが、おそらく50%以上の企業がクラウドへ移行するだろう」
実は質問しておきながら、明確な回答はないだろうと思っていた。ただ、この分野の先駆者でもある三澤氏ならば何らかの予見をお持ちだろうと思って聞いてみたところ、「5年以内」という明確な答えが返ってきた。