英下院のある委員会が、英国政府にはレガシーITシステムを近代化する能力がないと酷評する報告書を発表した。
英下院の公会計委員会が発表したこの報告書では、「優れた判断を下し、デジタルビジネス変革を推進するためのノウハウ」を持っていない政府高官が多すぎると述べている。
また同委員会は、「公共サービスの提供に不可欠なレガシーシステムやそのデータのリプレースや近代化を進めるための明確な計画が存在しない」ことも問題視した。
報告書では、「レガシーシステムが政府全体で広く存在しており、その一部は1970年代に作られたものだ。例えば政府は、英国の国境管理や年金支給などの重要な業務をそれらのシステムに依存している」と述べている。
The Registerの記事でも指摘されているように、英国会計検査院は、2021年9月に、利用開始から34年になる労働年金省のメインフレームが、10億ポンド(約1500億円)の年金が支払われない問題が起きた原因の一端になっていたことを明らかにした。
レガシーシステムの中には、今も安定しており、妥当なコストで稼働しているものもあるが、委員会によれば、「中には高リスクで信頼性が低く、セキュリティ上の脆弱性を抱えているものや、事業の変革を阻害しているものもある」という。
問題の一部は、レガシーシステムの存在が見えていないことにある。一部の省庁では、レガシー資産がどこまで広がっているかも、ほかの組織のシステムとの相互依存関係がどうなっているかも把握できていない。報告書では「各省庁は、自分たちが所有しているレガシー資産を限定的にしか把握しておらず、政府の中枢は、政府横断的なレガシーシステムのリスクを評価し、把握するためのプロセスを進めていない」と述べている。
英政府のレガシーIT問題を解決するための鍵になるのは、内閣府の中央デジタル・データ室(CDDO)だろう。CDDOは2021年に設置された組織で、傘下に政府のIT戦略を主導する専門家委員会を置いている。CDDOは現在、全省庁のレガシーITシステムを調べ上げようと試みているところだ。