財務省税関は、人工知能(AI)を活用して検査対象の国際郵便物をリアルタイムに自動識別するX線画像識別処理システムを導入し、税関検査の高度化・効率化に取り組む。システムの構築を受注したNECが1月7日に発表した。同システムは、国際郵便物の税関手続きを行う外郵出張所において、2022年4月から稼働する予定。
同システムは、2020年6月に財務省関税局が発表した税関行政の中長期ビジョン「スマート税関構想2020」の施策「先端技術の積極的な導入・利活用」の「AIによるX線検査画像審査支援」の一環として実施される。
近年、インターネットの普及による越境電子商取引(EC)貨物や個人輸入の増加などに伴い、グローバルで物の移動が増加している。こうした中、税関では国際郵便物の迅速な通関手続きが求められる一方、厳格な水際取り締まりも一層重要となっている。
国際郵便物の税関検査では従来、国外から届いた郵便物に日本への輸入が禁止・規制されている物品が含まれていないことを確認するため、税関職員によるX線画像の目視確認など人力で検査を行ってきた。今後さらに増加が見込まれる検査業務量に対応するため、新たな高度化・効率化の仕組みが求められていた。
同システムには、NECのAI技術群「NEC the WISE」の一つ「RAPID機械学習」を使用してNECと財務省が共同開発したAI学習モデルを搭載している。X線検査装置に国際郵便物を通すことでX線画像をリアルタイムにAIが分析・識別し、検査対象となる国際郵便物の1次スクリーニングを実施する。
これにより、税関職員の業務負荷を軽減しつつ、検査を高度化・効率化することが可能となる。同システムは精度の監視モニタリング機能を搭載しており、取り扱う郵便物の内容が変化してAIの精度が下がらないよう、学習モデルの精度維持・向上を図ることができる。
X線画像識別処理システムのイメージ