NECは1月6日、高精細な交差点の映像を第5世代移動通信システム(5G)とエッジコンピューティングを用いて低遅延で伝送し、さまざまな人工知能(AI)技術で車や歩行者の「交通状況測定」、人物の倒れ込み・害獣の進入などの「インシデント検知」、撮影映像に対する「プライバシー保護対応」をリアルタイムに処理する実証実験を実施すると発表した。
同実証では、信号柱に設置されたローカル5G(特定エリアで使用する5G)を活用し、4Kカメラの映像を伝送する。秋田県秋田市の交差点では1月6日から、東京都新宿区の交差点では1月24日以降実施する。
同実証は、内閣府が運営する官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の一つ「令和3年度 交通信号機を活用した第5世代移動通信システムネットワークの整備に向けた調査検討」にNECが参画して実施するもの。同調査検討では、5Gエリアの拡充と交通信号機のネットワーク化の促進に向け、交通信号機に5G基地局など5G機器を設置する検討をデジタル庁、総務省、警察庁が連携して推進している。
NECは、「令和3年度信号5G検討コンソーシアム(代表企業:株式会社三菱総合研究所)」の一員として、5G機器を交通信号機に設置して実際の利用シーンを想定した技術検証を行い、その価値の最大化に向けて同実証を行う。
日本では近年、人口減少・少子高齢化、都市部への人口集中、インフラの老朽化、災害リスクの高まりなど、さまざまな社会課題を抱えている。こうした状況の中、NECでは人、インフラ、モビリティーが協調して安全に自由な移動ができる技術開発に取り組んでいる。同実験での技術検証を生かし、交通事故の抑止、交通渋滞の詳細な把握と緩和、自動運転支援、街の見守りなどに貢献することを目指している。
実証では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が研究開発を進めるAI技術を流用した交通流解析アプリケーションを用いて、高精細な4K映像から交通状況(車、歩行者の位置・速度・進行方向)測定の実現性を検証する。将来的には、歩車分離式交差点の交通効率向上、自動運転車を含む走行中の車両に対する注意喚起に応用することを想定している。
車や歩行者の交通状況測定の技術検証イメージ
また、カメラ映像から交差点付近での人の倒れ込みや熊などの害獣の侵入といったインシデントの検知を検証する。人の倒れ込み検知には、行動のサンプルを数秒の映像として与えるだけで、ライブカメラの映像中から類似の行動を見つけ出す「オンデマンド行動検出」を使用する。インシデント発生時に交差点のカメラを用いて迅速に状況を確認・対処するといった街の安全性向上や、地域特性に合わせた都市マネジメントに活用することを想定している。
(左)人物の倒れこみ検知、(右)害獣の侵入検知
加えて、プライバシー保護対応として、映像中の人物の顔部分をリアルタイムで覆い隠す技術を検証する。交差点映像のデータ活用が実用化される際、交通利用者のプライバシーを保護した上で運用することを想定している。
映像内で人物の顔部分を覆い隠す様子
実証で撮影した映像については、個人情報保護法や関連法令を順守した上で実証実験にのみ利用するという。映像データは厳格な安全管理措置を講じ、実証実験の終了後に速やかに削除するとしている。